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【HQ】片翼白鷺物語(カタヨクシラサギモノガタリ)

第3章 星に願いを【Xmas番外編】


 シングルベッドに大の男二人が並んで寝るにはかなり窮屈ではあったが、まあ悪くなかった、と思う。

 久方ぶりに「良い子」認定してもらえたな、と寝癖で跳ねた朔弥の前髪を指先でちょんと弾いて笑みを浮かべる。
 そろそろ起きて準備しなければ、日課にしている朝のロードワークを始める時間は迫っている。けれど、二人分の体温で温まったベッドの中があまりにも心地良いので、あと五分だけ、と牛島は瞼を下ろす。

 その刹那に見た、夢の中。

 「おとうさん」と小さく書いた飾り気のない白い便箋。それを手に俯く幼い頃の自分の頭をそっと撫でる優しい手。
 顔を上げるとそこには柔らかく微笑む朔弥が片膝をついていて、暖かな腕でそっと小さな身体を抱き寄せた。
 知らず抑えていた色んな感情が一気に溢れ、しがみつくように両腕を彼の背に回すと、甘く名を呼ぶ声が耳朶の産毛を震わせる。
 ぎゅうと握りしめていた手紙が、いくつもの白い羽に変わってぱっと舞い上がる。
 寂しいような、嬉しいような、そんな気持ちでそれを見上げていると、一緒に行方を見守っていた朔弥が再び優しく微笑んで、そして。
「おはよ。と、メリークリスマス、若利」
 腕の中で身じろぐ朔弥が、まだ寝ぼけ眼の牛島へ、困ったように眉尻を下げてクリスマスの朝を告げたのだった――。

(星に願いを・了)
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