第23章 期間限定sharing.

辿り着いた秋紀の部屋は、殆ど片付いていた。
整理整頓されているという意味ではなく、空っぽに近いという意味で。

残っているのは、カーテンと、粗大ゴミのシールが貼ってある幾つかの家電。
それと、宅配便の送り状が貼られた段ボール箱が１つ。

完全に、引っ越し完了間際の部屋。

私に何の連絡もないのは、本人が動けないからだろうか。
それなら、引っ越しは誰がしているのだろうか。
身内であるなら、それは最悪の事態を想像する事が出来る。

どうにしても、嫌な予感が当たっている気しかしない。

宅配便の送り先なら、何か知っているかも知れない。
そこに連絡してみようと、送り状を見る。

書いてあったのは…

見慣れた、秋紀の文字で。
私の住む、あの家の住所。
受取人は熊野りら、つまり私だ。

これを書いたって事は、少なくとも動けない訳ではないらしい。

じゃあ、何故、私に何も言わず引っ越しなんかしようとしているのだろうか。

考えても答えなんか出る訳がない。

この荷物になら、何かヒントがある筈だ。
私宛なら、この場で開けてしまおう。
わざわざ送らなくても、持って帰れば良いだけ。

迷う事無く箱を閉じていたテープを剥がす。

中に入っていたのは、ここに置いていた私の物だった。