• テキストサイズ

【刀剣乱舞】銘々取りゝ 我等は刀よ

第5章 汚れちまった悲しみに



────


「酷いものだろう?」
突如掛けられた声に驚いて振り返ると、部屋の外に佇む見知らぬ青年を目にし、更に驚かされる。

薄紫色のふわりとした髪に、緑がかった深みのある瞳。華やかな着物に身を包むその人は、その場に立っているだけで辺りに花が咲き誇らんばかりだ。

まるで“艶やか”という言葉が具現化したような美青年の向ける悲しげな微笑みには、私に対する殺意にも似た静かな敵意が潜んでいる。今し方の問い掛けも、まるで私の反応を見定めるかのようなものだった。



「──歌仙…」


縁側に座り込んでいた清光が彼を見上げ、ほんの少し驚いたようにそう呟く。彼は顔に憂色を見せ、美しい所作でスっと片膝を付き、清光の背を摩る。


「加州、平気かい?あまり無理はするものじゃないよ」

「うん、平気だよ。主も、心配しなくて大丈夫だから」

「!」


まるで心でも読んでるかのように、清光は一言も発してない私にも気遣いを掛けた。読まれたことには思わずギクリとするが、二人の距離が縮まっているように思えて、場違いにも少し嬉しくなる。


「“あるじ”……。加州、君はこの人間を主と呼んでいるのかい?」


彼は優しげな瞳に、鈍く重々しい眼光を走らせ私を睨め付ける。その不穏な気配を一早く察した清光が慌てて彼の服を掴んで止める。


「待って歌仙っ!お願い、落ち着いて聞いて。この人は、この人は違う。前の審神者とは全然違って“本当に”優しい人なんだよ。きっと俺たちを助けてくれる!」

清光の言葉を黙って聞く彼の表情は芳しいものではない。当然、清光に何をしたという顔で見られる。


「加州、君は一体何を、」

「分かってる。何でだって言うんでしょ?そうだよね、俺だってそうだよ。なんでこの人のこと庇ってんのかって、何で信じてんだって思うよ」

/ 58ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp