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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第24章 二つ島~治療~ ★


 足に確かに感じる波の感触。
にも関わらず、あの不快な虚脱感がない
マルコはその事実を確認するように、海を眺め、海に浸かった自身の足元を確認し、
驚きに沙羅を見つめた。
「大丈夫でしょ?」
悪戯が成功したかのように笑う沙羅と、未だに信じられない様子のマルコ。
「夢みたいだい・・・」
ぽつりと呟いたマルコの耳元に届く水音と、膝上に感じる水の感触。
「おいっ!」
呆れたように声を上げたマルコを他所に、楽しそうに水を蹴り上げる沙羅。
沙羅が幼い頃、幾度こうして水をかけられたことか。
いつもびしょぬれになり、酷いときには波を起こされ頭からかぶり、海に倒された。
懐かしい日々と重なる思い出、重ならない記憶。
蹴り上げられた水は、上半身にはかからない。

あぁ・・・
もう、少女ではないのだ

そんなことは既知のこと。
でも、急に実感した沙羅の成長。
その過程を見られなかったことへの、やるせない思い。
少女が一人で新世界を生き抜き、大人の階段を上ってきたことの意味。
そういった事を思ったら、

愛しさが


溢れた。

「沙羅」
溢れた想いに声が掠れる。
沙羅が応えるよりも早く、繋がれたままの手を、引いた。
「マルコ?」
急な行動に戸惑いを露わにする沙羅。
その沙羅をぎゅっと抱きしめた。
「ありがとよい」
「・・・ん」
互いに伝わる心。

海へ誘ってくれたことも

海に焦がれている心に気づいてくれてたことも

一人取り残されたような、寂しさを感じていたことに気づいてくれたことも。

“ありがとう”

二人は離れていた時を共有するかのように、暫くそうしていた。
足元を優しく行き来する波の音だけが、響く。


“これから先は共に歩みたい”

湧き上がる想い。
時に切なく
時に苦しく
時に愛しく
長く長く沙羅を想っていた。
その想いを告げたい。
ほんの少しの空間すらも惜しむようにマルコはゆっくり体を離した。
「沙羅・・・」
「?」
見上げる瑠璃色の瞳。
先程は伝わらなかったが、今なら伝わる、伝えられる。
「俺のものに、なっちゃくれねぇかい?」
「・・・」
見上げたままの瞳は、見開かれたまま動かない。
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