第22章 二つ島~試練~
その様子を少し離れた物陰からビスタとクリエルが眺めていた。
その表情は対照的だ。
満足そうに笑っているビスタと、
驚愕に瞬きすら忘れ、固まっているクリエル。
マルコと沙羅が角を曲がり、姿が見えなくなとようやくクリエルは、目を瞬かせた。
「し、信じらねぇ」
やっとの事で口からでた言葉にビスタは冷静に答える。
「貴殿は初めてか?」
クリエルの返事はない。
「あの二人は昔からそうだ」
回顧しているのだろう、遠い目をしたビスタは一言一言、自分にも言い聞かせるように語った。
「昔から、特別なのだ、あの二人は」
「そ、うか」
やっとの思いで口から出た言葉は、あたりさわりないもの。
「お、俺には信じらねぇ、あのマルコだぞ」
クリエルの言いたいことはわかる。
頭の回転が早く、常に冷静沈着。
ドライに見えて、その実、誰よりも白ひげ海賊団を愛し、白ひげに忠誠を誓う男。
厳しくも、面倒見のいい一番隊隊長、不死鳥マルコ。
ビスタとて、マルコが弱音を吐くのを聞いたことは皆無だ。
クリエルからすれば尚更だろう。
一部の隊員から鬼隊長と恐れられているのも事実。
「ま、幻じゃねぇよな?」
自分の顔をつねるクリエルに、ビスタは頷いた。
「もちろんだ、・・・貴重な光景であろう」
そうして、楽しそうに付け加える。
「まぁ、世界中を探しても、我らが一番隊隊長の頭をあのように撫でられる者は沙羅以外におるまい」
その言葉にクリエルは、壊れた人形のように何度も首を縦に降ったのだった。