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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第21章 半端な覚悟ではない


沙羅が、マルコだけに特別に心を開いて、信頼を寄せるのが羨ましかった。
再開した沙羅が、マルコを恋しそうに見つめることに気づいた時は、切なかった。
欲しいと思わなかったわけではない。
だが、サッチにとって
マルコも大切で、
沙羅も大切で
そんな二人を傷つけるような真似はできなかった。
ましてや、その二人が無自覚に惹かれ合っているのだから。
マルコが気持ちを自覚するよりも早く、サッチは自分の気持ちを自覚していた。
だからこそ、気づいた。
気づいてしまった。
二人がお互いにとって特別な存在で、
それがいつか愛に変わるであろうことも。

“長かったな・・・”

沙羅への長い長い片想い。
そして、決して告げることのない片想い。
この想いが、すぐに消えることはなくても、
やっと、
やっと・・・

“諦らめられる”

サッチはフッと微かに笑うと二人から視線を外した。
告げないと決めていた想い。
それでも諦められなかった想い。
それを諦めるには、
やはり半端な覚悟ではできない。
ましてや、家族の前で誓ったのだ。
『俺はいいぜ』と。

“ったく、すげぇ奴だよ”

サッチはチラリと一人気怠げに朝日を眺めるイゾウを睨んだ。
『それで、どうだ?サッチ』
あの場でサッチの覚悟をも試してきたイゾウ。
全ては沙羅のために。
本気になったマルコとサッチが、万が一にも沙羅を取り合えば船内が割れることは必至だ。
そうなれば、沙羅は責任感じて船を降りてしまうかもしれない。
自分もまだ惚れているくせに、沙羅のために兄を演じているイゾウもまた、何かしらの覚悟を決めた一人なのだろう。
サッチは小さくため息をついた。


マルコは欲する覚悟を決め、
サッチは欲しない覚悟を決めた。
イゾウは沙羅の望む姿を演じきる覚悟を決めた。
そのどれも半端な覚悟では、ない。
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