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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第3章 偉大なる双璧


 沙羅が乗船した翌日、マルコは船内を案内していた。
「この先を曲がった先がオヤジの部屋、こっちが食堂だよい」
その食堂からちょうど“にこにこ”とした老人が歩いてきた。
好々爺と表現するに相応しいその人物の名を歳三(トシゾウ)と言う。
「おやおや、可愛いらしいお嬢さんだ」
「・・・父さまの写真の人!!」
歳三の顔を見た瞬間、破顔した沙羅はそう叫ぶと歳三に抱きついた。
「っ沙羅?!」
驚いたマルコを他所(ヨソ)に、歳三はその小柄な体躯に反して、沙羅をしっかりと受け止める。
「そうかそうか、お前さんが沙羅か」
そしてそのまま軽々と抱き上げた。
「儂は歳三だ、ロイにはモビーを作った時に世話になったもんだ」
目線を合わせて目を細める様は、とても海賊には見えない。
だが、彼は白ひげ海賊団の副船長であり、一度(ヒトタビ)剣を抜けば、文字通り敵を“ばっさばっさ”と斬り捨てる剣豪であり、武装色と見聞色の覇気を極めた達人でもあった。
無論、武勇伝は数知れず。
白ひげと歳三の意見が合わず覇気がぶつかり合い、クルーが泡を吹いて倒れたとか、
海軍の軍艦を真っ二つにして沈めたとか、そんな話がごろごろと出てきて、挙げれば切りがない。
そんな歳三を“じぃっ”と見つめると沙羅が言った。
「・・・綺麗な人」
「はっ?」
思わず声を出したのは当人ではなくマルコ。
だが、意に介することなく言葉を続けた。
「おじ様も綺麗な人だけど、おじいちゃんもすごく綺麗」
歳三は驚いたように目を見開いた後、笑った。
「さすがはユエさんの娘さんだ、お前さん“見える”んだね」
「歳じぃ、何の話だよい」
話の見えないマルコにはさっぱりわからず、何となく面白くない。
そんな様子をみて歳三は、またしても目を細めた。

“おやおや、珍しいもんだ”

 育った環境が、そうさせるのだろうか。
何事も器用に、“広く浅く”こなす反面、何事も狭く深くこなす事を避けるマルコ。
それは、人間関係も同様で、白ひげやサッチなどはその限りではないが、家族に対してですら一線を画す所があった。
『俺は、嫌われ者だからよい』それを聞いて以来、歳三は孫のような歳のマルコを気にかけていた。

“いい兆候じゃい”

ニヤリと笑ったその顔は、やはり海賊らしくなかった。
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