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スパイラル 〜螺旋の先〜【気象系BL】

第7章 maboroshi


【智side】

一睡もせずに、ソファに座り膝を抱えたまま、ずっと翔くんと過ごした10年のことを思い返していた。

最初の夜、ネクタイの色は青だった。

前の日、合鍵を渡された俺は、彼の部屋ですごく緊張しながら彼を待ってた。

初めて触れられた時、ショック死するんじゃないかってくらい、どくんって心臓が跳ねた。

勉強熱心な彼は、どこで知ったのやら、ちゃんと予習してあって。
俺が辛くないように、ゆっくりと身体を開いてくれた。

それでも入れるときは死ぬかと思うほど痛くて。
ぶん殴ってやろうかと思った。

だけど、彼の瞳がすごく大切なものを見るかのように優しくて。

ごめんって何度も謝りながら入ってくる彼の背中にすがりついて、その衝撃に耐えた。

最初は痛みしかなかったのに、揺さぶられてるうちに快感の方が大きくなってきて。
同時に達したあと、彼は嬉しそうに微笑んで、強く抱きしめてくれた。

その次の週は、赤いネクタイで。

俺は、彼がしてくれたことを思い出しながら、同じように気持ち良くなってもらおうと必死だった。
あんなに一生懸命になることなんて、今まで生きてきた中であったかなってくらい。

終わった後、翔くんが「あんまり痛くて、ぶん殴ろうかと思った」って冗談混じりに言って。
同じ気持ちだったことが、彼と深く繋がってる気がして。

俺たちは笑い合いながら、キスをした。

あれからずっと、仕事でどうしても会えないとき以外の月曜日は、翔くんの家で過ごした。

それは大きな波がやってきたら、簡単に崩れてしまう砂の城だったけど。
それでも、俺は幸せだった。
手離したくなかった。
たとえ誰かを傷付けても。
でも、一番傷付けたのは、一番大切な筈の君だった…。

LINEの通知音がなって、何気なく見た画面には、翔くんが入院したことが書いてあった。

思わず立ち上がって、君の元へ駆け出そうとしたけど。
俺にはそんな資格はもうないんだ。
もうただの、メンバーでしかない。
それも、一番遠い……。

自業自得だ。
あの時、自分の欲望で手を離さなかった、俺に与えられた罰なんだ。

もう二度と、君に触れることは出来ない……。

俺は携帯を手に取ると、ニノにLINEした。

”会いたい“

俺は、ズルい。
あいつが拒否できないのわかってて…。

それでも、一人でいたら凍えてしまうから…。


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