第7章 可愛いお前の虜 / 伊達政宗
「馬に乗る時は気をつけろ。 どっか行きたきゃ、俺が乗せていってやる」
「はい、ごめんなさい……」
しおしおと謝る舞を寝かしつけると、家康が政宗を部屋の外へと招いた。
舞を残し家康の後を追う。
家康は廊下で、泥んこになった風呂敷包みを政宗に差し出した。
「なんだ、これ」
「舞が落馬した理由ですよ。 これ、なんだと思います?」
「さぁ……」
「政宗さんの弁当」
なんでも舞は、視察へ行く政宗の為に、弁当を作ったのにも関わらず渡すのを忘れ。
慌てて追いかけた結果、落馬してすごすご帰って来たのだとか。
舞らしい理由に、政宗は場違いながらも心が温かくなる。
「理由は解った。 舞は連れて帰る」
「一応全身打撲なので、動かしたくないんですけど」
「自分の女を他の男の屋敷に置いておけるか。 異論は聞かねぇ」
こうして、舞が普通に生活出来るようになるまで、付きっきりで面倒を見ると約束し、政宗は舞を連れて帰った。
もちろん、泥んこ弁当もしっかり戴いたのは言うまでもない。
「ほら、舞。 口開けろ」
「一人で食べられるよっ」
「そう言って、昨日鼻に粥を食わせたのはどこのどいつだ」
「うー……」
「ほら、あーん」
政宗が差し出した匙(さじ)に不満を覚えながらも、舞は大人しく口を開ける。
あれから数日。
舞は政宗の御殿で、大人しく療養していた。
文字通り、政宗が付きっきりで舞の面倒を見ている。
三度の飯から傷の手当て、はたまた湯浴みをする時まで。