第2章 第二章
鶴丸さんの言葉に息を呑む大倶利伽羅さんは私の両手を包んでいる手を振り払らうと、照れたように走り去っていった。その背中を目に追い、すっと手を伸ばすも触れられずいなくなってしまった。暖かい手…やっぱり死んで欲しくないなと少し寂しくなった手のひらをギュッと握り締めた。
「良し!主…俺と一緒に回ろうぜ!沢山の驚きを君に贈ろう」
キラキラとした笑顔に眩しくて、なんか良く分からないけれどときめいてしまいそうになるが、驚きというのは嬉しいサプライズではなく…危なそうな驚きの言葉に聞こえた気がした為ぶんぶんと左右に首を振った。私の顔はとてもげんなりしていると思われる。
「いや、嬉しくないですよ。先ずなにもない畳から突然現れて軽く寿命縮みましたからね?冗談ではなくて」
「確かにいい反応だったからなー…それよりもだ。君は俺に驚きをもたらせて欲しいと今言ったばかりではないか?」
「いやいや、言いましたけど…寿命が縮むような驚きは必要としてませんよ」
「なら、どのような驚きなら主は驚いてくれるんだ」
ニヤニヤと不適切な笑みで私の頭を撫で回す鶴丸さんは親しみを込めて私の肩を組む。なんという悪趣味な…と小さく悪態をついた。ぺちぺちと肩を組まれている手のこうを離して欲しいと叩いて見る。ここできっと長谷部さんの名を呼べば怒りの鉄拳が落ちるとは思うが、あれは見ている私でも痛そうだと顔をしかめる。私のしかめた表情で怒ったのかと思った鶴丸さんは少し渋り気味で私から離れていった。
「はい…この話しは終わりにしましょう!私は長谷部さんがいますし、また今度にしましょうか?驚きにも準備が必要でしょう?出来たらまた呼んで下さい、いいですね?」
言い訳出来ないように捲し立て勢いに任せる。長谷部の紫色のカソックを背中から押して、失礼致しますねと頭を下げて逃げるように去った。何度か瞬きさせていた鶴丸さんはまた大笑いして楽しそうだったからこのまま放置しておこうと思う。
「主、宜しかったのですか…」
「なにがです?」
「いいえ…俺は主を楽しませるような会話術はありませんので、鶴丸国永の方が宜しかったのではないかと思いまして」
「まぁ鶴丸さんと会話するのは楽しいですよ?でも…私が頼んだのはへし切長谷部さん。貴方です…私は誰でなく貴方に案内して欲しい。ですが長谷部さんが嫌だと仰るのなら無理強いは致しませんけど…」