A lot of color【short story】
第3章 3 伝えたかった
昔から自分の事を人に話すのは苦手で。
ましてや、恋愛相談なんて自分からしたことない。
恋をしたことがないって言ったら嘘になる。
でも、気持ちなんか伝えられないし、見ているだけで幸せ。
だから、今の恋だって私だけの秘密で。
その相手は優しい気の利くクラスのムードメーカー。こんな私にも話しかけてくれた大翔くん。
でもクラス替えがもうすぐある。
また同じクラスになれるか分からない。
だから、相談しようと思って、小学校の頃からの親友に話すことにした。
『あ、あの。莉緒。』
「んー?どうしたの?」
『あ、あのね…!わ、わたし、………好きな人が、いるの……。』
「へ!?ちょっ!ちょっ!誰!?」
『あの……大翔、くん…。』
「え……。」
私が大翔くんの名前を出すと莉緒の顔が曇った。
『莉緒……?どうか、したの……?』
「あのね。陽菜。そういう話、陽菜の口から初めて聞けてすごく嬉しい!話してくれてありがとう!」
そんなこと……!私がお礼を言いたいのに!
優しい莉緒の心遣いが嬉しくて、泣きそうになった。
「でもね、大翔くん、陽菜を一年の最初の方からずっと好きだったのに、陽菜そういう素振り全く見せないから諦めちゃったみたいなの。」
『…………………え………。』
もう、何も分からない。
哀しくて涙が出そうとかそんなんじゃなくて、頭が真っ白で。
なんで?私がいけないんだ。
もっと早く莉緒に相談しておけばよかった。
そんな考えしか思い付かない。
恋って難しいねなんて莉緒に強がってみせるけど、私よりも泣きそうな顔してる莉緒が、抱きしめてくれて。もっと好きが溢れて止まらなくなる。
それを自覚して、目の前が涙で歪んでいく。
ねえ、大翔くん、
私にもっと自信があったら、勇気があったら
諦めないでいてくれましたか?
あなたの隣に立つことができましたか?
隣で、笑えてましたか?
今、私のこの気持ち全部あなたに伝えてしまったら、
なんて答えますか?
伝えれたらどんなに楽だっただろうか。
大好き。
……まだ、“でした"はつけられなかった。
伝えたかった END