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第7章 アルバイト


きとりちゃんの転勤の日が近付いてきたある日、リビングに黒尾さんときとりちゃんがいた。

私はキッチン側で食事の準備をしていて、前の話の内容は聞こえていなかったけど、本当に突然言ったように思う。

「クロ、今週の日曜日にブライダルフェア行かない?」

きとりちゃんの言葉には驚くしかなかった。
それは黒尾さんも同じで、やや引いた目で発言をした本人を見ている。

「…センパイ、俺、まだ結婚とか考えてねぇよ?向こう、って離島だったか?まで着いて来いって言われても学校あるから無理だろ?」

少し間を空けてから答えた黒尾さん。

いやいや、その前に問題があるだろ。
貴方達は別れたんじゃなかったっけ?
そこをまず突っ込んだ方が良いと思う。
思っても言わず、ちょっと気になるその話を作業する手を止めて聞いていた。

「や、私もクロと結婚とかしたくないから。」
「じゃあ、どういうつもりなんだよ。」

即座に否定を返すきとりちゃんと、安心したような複雑なような顔をしてる黒尾さん。
つい、もっとちゃんと聞きたくなってしまってカウンターに肘を付いて二人を眺めた。

「最後、なんだよね。担当した人達の式は全部終わったし。今度の模擬挙式でモデルさんにドレス選んであげる仕事が、こっちで最後の仕事。」

そういえば、きとりちゃんはウェディングドレスを花嫁さんに選ぶ仕事をしている。
ドレスコーディネーターだかなんだったか、私には覚え辛い横文字の職業で、近年流行りのリゾ婚の為に沖縄だかの離島の新規オープンのスタッフになるんだと聞いていた。
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