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大切【NARUTO】

第36章 私は





「リクの様子に変化は?」


カカシがリクの顔を覗いてから聞いた。
全く動かない彼女を見て、俺は胸の奥が何かにえぐられるような感覚がした。


「…見ての通り、顔色は良くなってる。だが、一度も目を開きはしてない。」


そう、もう治療が済んでから2週間。
なのに、まだ一度も起きない。

サスケはリクの頬に手を伸ばした。


「俺の所為で…。リク、早く目を覚ましてくれ…。」


胸が苦しい。

柄にもなく、涙が目に溜まる。
こんな姿、誰にも見られたくないのに。
涙なんて、弱い奴が流すもの。


「俺は…、弱い。」


だから、リクの事だって守れない。

唇を噛み、涙を耐えていると、カカシがポンと頭を叩いた。


「じゃ、俺ちょっと飲み物買ってくるから。
サスケ、まだご飯食べてないでしょ?
それも適当に買ってくるから、待ってろ。」


多分カカシは、気を使って出て行ってくれた。
変な気を使うなと思うと同時に少しだけ、有難い気持ちもあった。

そして、病室でまた、二人きりになった。

涙は"あの日"に枯れ果てたと思っていたのに、それはとめどなく流れてくる。

もう、泣くのは何回目だろうか。

昔、一度同じようなことがあった。
幼馴染がサスケを庇い重傷を負い、一ヶ月の間、目を覚まさなかった。

その時も同じように、泣いた。

泣くしかできなかった。


「俺は、守ると決めた女に、何度も助けられて、その度にそいつは大きな傷を負う。
俺に力がないから、守りたいものも守れない…。あいつも、殺せない…!」


リクの手をぎゅっと握った。
早く目を覚ましてほしい、早く元気になってほしい、早く笑ってほしい。
その思いを込めて……。





その時、僅かな力ながら、握り返される感覚がして、俺は驚いた。


『…んっ…。さ…すけ。』


ハッとして顔を上げた。
俺は声のする方を見て、また涙が込み上げてきた。

リクがうっすらと目を開けてこちらを見ていたんだ。


「……リクっ…!」


『ふふっ、…泣かないで?ずっと、会いたかった。』


「…泣いてねぇよ。」


嘘、呆れるほど泣いていた。
そんなことなどバレたくなくて、強がりを少し。

顔を赤くして目を擦ると、リクが微笑んだのが見えた。

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