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大切【NARUTO】

第34章 デートをしよう





目が覚めるとそこは病院だった。
良くお世話になる、木の葉病院の病室だ。

外はもう暗くなり、耳を澄ませば、様々な音が聞こえる。


風の音、料理をする音、足音、笑い声。


いつもならそれで心が安らぐのだが、今日はそうは行かない。

また、悪夢をみた。



サスケが遠くに行ってしまう夢。
誰かに奪われ、離れ離れになる夢。
サスケに声が届かない夢。

月夜に浮かぶ、紅の眼の夢。



妙にリアルな夢で、恐怖と焦りが増す。
そして、悲しく苦しい夢だった。

夢なら忘れてしまいたいのに、今回ばかりはそうは行かないらしい。
朝は忘れたくなくても、すんなり忘れてしまったのに。

何故なのか、考えても分からない。


ただ、それらは本当に起こりうる事、もう既に起こった事、その何方かだとは何となく感じていた。

まあ、勘ってやつだけれど。


私はそんなマイナスな感情を落ち着かせるため、一度深呼吸をし、病室の窓の外を眺めた。

美しい星々の瞬きの下、そこに木の葉の里はある。

まだまだ明るく、活気付いた商店街。
友達と遊ぶ公園。
子供たちが親と手を繋いで帰る道。
火影邸、火影岩。

そして、行き交う人々。

どこからも楽しそうな、暖かい雰囲気が流れており、木の葉の里は平和な里なんだと思う。

それと同時に、この明るさの陰で、暗闇に消えてしまう事だって出来てしまう。

夢の、紅の眼のように。


(……結局考えが元に戻ってる。どうしたものかな。)


今日の私の思考回路では、どうやらマイナスな感情から抜け出せないらしい。

全く、呆れてしまう。

誰にも気づかれないほどの小さな溜息をつき、もう一度窓の外へ目をやると、良く見覚えのある人が、病院へとやってくる姿が目に留まった。

そう、サスケだ。


(……何話せばいいかな。)


デートをめちゃくちゃにしてしまった。
そんな私なのに、お見舞いに来てくれたのだろうか。

まずは謝るべきかな。
それとも連れて行ってくれるつもりだった場所、聞いてもいいかな。

それよりも別の話をしたほうがいいのかな。

そんな事を考えている内に、病室の扉が叩かれる。


『ど、どうぞ…っ!』


ああ、最悪。
声が裏返った。



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