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【R18】君は華より美しい(仮題)

第9章 届いた手紙と蝶々結び


「サンテベドリ伯爵のパーティーは欠席いたします」
「え…」
「丁度、夜警当番でして」
「そうですの…。それは仕方ありませんわ」
「それから、一ヶ月後には昇格試験がありますのでそれまでは、外出は控えるつもりでいます」
「一ヶ月後まで…」

 ジョエルは沈んだ様子で俯いてしまった。
 そんな彼女を心苦しく思いながら、ファンドレイは問いかける。

「ジョエル様は、こちらへはよく来られるのですか」
「こちら…?」
「図書室です」
「あ…いえ、滅多に…。今日が、初めてですの」

 そうだろうな、とファンドレイは思った。
 本を読むのに公爵令嬢であるジョエルがわざわざ図書室に来る、なんてことは早々ないだろう。
 取り寄せればいい話なのだから。

「その…理由作りのためですわ」

 ジョエルの目が右左へと泳ぐ。
 どういうことかと彼女を見つめていると、ジョエルは意を決したようにファンドレイを見返してきた。

「王宮の図書室ならば、通ってもおかしくはないでしょう? その…ファンドレイ様を少しでもお見かけできたら、と思いましたの…」

 ファンドレイは驚いた。
 ジョエルが、自分に会えるかもしれないから、とここまでやって来るなんて。
 彼女が王宮に訪れてファンドレイの姿を見られる可能性はほとんどない。
 何故なら、彼女のような来訪者が足を踏み入れることのできない場所での警備が多いからだ。
 そして自分が図書室にやってくる可能性は、つい昨日までゼロだった。
 それに、彼女がこの書架に近寄らなければ会うことはできなかっただろう。

「まさか、いきなりお会いできるなんて思ってもいませんでしたわ」

 ジョエルは持っていた本をぎゅっと抱きしめる。
 その仕草が可愛らしくて、ファンドレイは頭の中で考えるより先に、口が開いた。

「…しばらく、社交場には顔を出しませんが…ここには、来ます」
「……はい」

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