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【R18】君は華より美しい(仮題)

第1章 そんな出会いだった


「ジョエル様、今日のドレスは何色になさいますか?」
「んん…今日はプレイラが来るかしら」
「ええ、いらっしゃるご予定でございます」
「プレイラがいるのなら…そうね、暗い色がいいわ」
「まぁ、ジョエル様…もっと華やかなお色みでなくてもよろしいのですか?」
「いいのよ。わかっているでしょう?」
「それはそうですが……、畏まりました。では深紫のものをご用意いたします」
「ありがとう」

 そんな会話はよくあること。
 侍女たちは皆、ジョエルを彼女の母のようにもっと派手で、華美に飾り立てたい!と思っていることをジョエルは十分わかっている。
 けれど、ジョエルは目立つのが好きではなかった。

(あたくしは、ひっそり、こっそりと生きていたいのだけど…)

 十二歳を越えたあたりから、ジョエルの体はどんどん大人になっていった。
 心は追いつかぬまま、ジョエルは女としてそれは美しく成長した。
 社交界デビューをしたのは十五のときであったが、押し寄せる男たちは恐怖の対象でしかなかった。
 それゆえ、結婚相手を探すための社交の場はジョエルにとって拷問に近く、二十歳を過ぎても結婚相手が決まらないという状態になっていた。
 求婚する男は増えるばかりで一向に減らないので、いつでも結婚はできるのだが。

 侍女にコルセットを締め上げられつつ、ジョエルは手袋を嵌める。
 母の趣味のせいで、ジョエルのドレスはどれもこれも胸元が大きく開いている。
 ジョエルはせめてもう少し肌の露出を控えたい、ダンスを踊る際に直に触れられたくない、ということで長い手袋を愛用していた。

 ドレスと同じ色の手袋をきっちりと肘まで上げて、ジョエルは目の前の鏡を見る。
 見慣れた顔が無表情にこちらを見ている。

(この顔のどこがいいのかしら)

 常々そう思っているが、ジョエルが視線を向けるとどんな男も相好を崩すので、そういうものなのだ、と受け入れざるを得ない。

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