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互換性パラノイア【TOA】【裏】

第6章 4日目


「ルルさん、ただいま。」
「おかえりなさい。」
「突然なのですが、陛下が今日の食事を共にしたいと言い出しまして。よろしいですか?」
「はい、いってらっしゃいませ。」
「いえ、ルルさんもですけど?」
「え!!」
ジェイドさんがいつものシルクのブラウスにお着替えをなさりながらさも当然のように言うので、私は預かったジャケットを思わず落としてしまった。
「こちらに来るそうですので、いつも通りで良いと仰ってました。なので、ルルさんもいつも通りのラフな格好で構いませんよ。」
「い、いいえ!そんな、……えっと、髪もぼさぼさですし!お化粧もほとんどしてませんし!へ、陛下は何時にいらっしゃるのですか?」
クローゼットとドレッサーを往復しながら、私は狼狽えながら聞く。
「もういるぜ。」
「きゃん!」
「おやおや、レディのいる部屋にノックなしでいらっしゃるとは……さすが暴君ですねぇ。」
「普段の様子が急に見たくなってな。悪かったな。」
王様、と言うにはあまりにも荒々しい、でもその中に美しい高貴な雰囲気、どちらもが感じられる。
「まあ気にすんな、今日はお前たちの仲良しっぷりを見に来ただけだ。気楽にいつも通りの生活をしてくれ。」
「そんなこと仰ってよろしいのですか?私達、普段はこの時間から一試合ですが?」
「勝手にやってろ。」
「試合?」
ジェイドさんは、おほん、と咳払いすると、椅子を引いてくれた。
いつものように座ると食事が運ばれてくるまで、ささっと私の髪を1本に編み込んでくれた。
「これでよろしいですか?」
「ありがとうございます……。」
細くて冷たい指先が、ゆっくり輪郭をなぞった。
それが、いつも夜に触ってくださってるときの艶めいた感触に似ていて、私の心臓は今にも破裂しそうなくらいだった。
御二人は色鮮やかな食前酒を楽しまれ、私が緊張しないようにと明るく楽しくお話してくださった。
昔話も少し聞かせていただけて、ジェイドさんの小さな頃や私と同じ年代くらいだった時のことを昨日今日の出来事のように話してくださった。
「失礼致します。大佐、お客様です。」
「ああ、これは申し訳ありません。一旦抜けさせていただきます。」
膝の上のナプキンを素早く畳むと、兵士さんとジェイドさんは廊下に出ていった。
後ろ髪を引かれるように、二人が消えていった扉を見続けた。
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