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互換性パラノイア【TOA】【裏】

第5章 3日目の微睡み


今日こそ少し仕事を片付けようと出た。
何故だか浮き足立って出掛けてしまった昼間。
不思議と悪い気はしなかった。
彼女が隣ですぐに赤面する様子は、胸の奥底がこそばゆい、それでこそ心地よく感じる。
いやだと思う素振りもなく、たまに目が合うと恥ずかしそうに隠れた。
(一晩くらいではダメですね。)

報告書も特に異常はなく、新しく指示を出すよう言っている者に対して軽い指導と指示を出し、戦地の情況を聞き、書類にまとめて陛下に持っていく。
(今は会いたくないのですがねぇ。)
「おお!いいところにいた。近況を早く言え!」
(良いお顔をなさる…。)
苦笑いをすると、陛下はにやっと黒い笑みを浮かべ、大きな個人用ソファにどっかりと座った。
「別に。特に何もありませんよ。」
「お前が珍しいことすっから、城内大騒ぎだぞ。」
「すみません、気分屋なもので。」
これで満足ですか?と聞くと、陛下は不満そうに、もういい、と言って開放してくれた。
「今日、こっちは会食なんだが、そのうちそいつも連れて来い。」
「はいはい…。」
物好きな人だ。

私室に戻ると、物音一つしなかった。
「ルルさん?」
ノックもせずに開けると、ソファですやすやと寝息をたてている小さな少女の姿。
「…無防備すぎませんか?」
耳元で声をかけたが、全く反応しなかった。
光がさして、くっきりと睫毛が形を成して、上下に小さく揺れているのが見えた。
日が傾き、光や影の色が変わっていく。
その光景に見入ってしまったのか、ノックの音で漸く我に帰った。
「はい。」
「大佐、お食事の用意が出来ました。」
「もうそんな時間でしたか。」
戸を開け、ワゴンがカシャカシャと音を立てながら次々と入ってきた。
「……ん。」
「ルルさん、お食事ですよ。」
よかった。目覚めるところが見れた。何回見ても、幼い少女が目を開き、こちらをゆっくり見る姿は堪らない。
うつらうつらしている彼女の前に食事が運ばれる。
何口か食べてやっと目が覚めたのか、キラキラした表情で美味しそうに口に運んでいく。
「スープは昨日教えたでしょう?手前から奥です。」
背後に回って手を重ねて動きを教える。
彼女はびくっと震えた。
「あ……すみません!」
口の端が潤って一層色気を感じる。
使用人がいるのも無視して、食らい付くように唇を貪った。
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