第25章 こたつ片付けなきゃね
そしてとうとう和の名前が呼ばれた。
「はい!」
と、元気よく返事はしたものの、その顔は強張ってるし、花束を握った手だって、小刻みに震えている。
元々大人しく、人前に立つことが苦手な和だから、相当緊張しているんだろうな、と俺は思った。
頑張れ、和!
俺の心の声が届いたのか、和が俺の方をちらりと見ると、小さく頷いた。
「お父さん…」
いつもは”パパ”って呼んでるのに、”お父さん”なんて…
始めて聞く言葉に、俺は複雑な心境になる。
「お仕事大変なのに、僕のために毎日ご飯を作ってくれてありがとう。
いっぱい遊んでくれて、ありがとう。
一緒にお風呂に入ってくれて、ありがとう。
それから…
僕のこと大好きでいてくれて、ありがとう。
僕もパパが大好きです」
拙い言葉で、それでも一生懸命俺に感謝を伝えようとする和の姿に、自然と涙が零れた。
「パパ? 男の子は泣いたら駄目なんでしょ? だからパパも泣いたら駄目よ?」
「うん、そうだね…? 男の子は泣いちゃ駄目だよな?」
小さい頃から何度も言って聞かせた言葉を、まさか俺が言われるとは思わなかった。
けど、今日だけは…今日と明日だけは、パパだって泣いたっていいだろ?
和の手から花束を受け取ると、俺はそのまま和をギュッと抱きしめた。
俺の腕の中の和は、いつの間にかこんなにも大きくなっていたんだと、嚙みしめながら…。
さあ、明日はいよいよ卒園式だ…。
ハンカチ倍は用意しとかなきゃだな…(;^_^A