第6章 責任
「...へ?」
なんという間の抜けた声...と思った。
「あの...?大西さん、私、こんなけしか傷ないので大丈夫ですよ、顔を上げて」
「大丈夫じゃない!!!」
はじめて聞く大西さんの苦しみ叫んだような声。
耳に響いてかすかに残る。
「大丈夫じゃないんだ...。どうしてマルタイを無傷で護れないんだっ!」
そこに、一ノ瀬さんも駆けつけた。
「っ大西...!おまえ、またそんなこと考えているのか」
「一ノ瀬さん...。でも、よく見てみてくださいよ。こうやって裕香さんも護れなかった。俺達はSPと形だけ言っておいて人ひとり護れもしない!」
「...今回は、犯人が凶器を持っていた。だから、俺達もすぐには動けなかった。それだけのこと。...だろ?何をそう思い悩むことがある?」
「一ノ瀬さん...あんたは、あの時のことを忘れたんですか!?マルタイとなっていた詩織さんを護れなかったあの時を!!」
「......。」
一ノ瀬さん...??
可愛らしい顔をした大西さんは今はどこにもいなくて。
ただ、苦しい声だけがこだまして。
「あの時は、仕方...なかったんだ。犯人が大勢の上、ピストルも持っていた。確かに、俺達がもっと早く避難させれていれば...とか後悔することもある。だが、もう終わった話なんだ。」
「怖くないんですか。また失ってしまうかもしれないということを。」
「...もう話は終わろう。」
一ノ瀬さんも苦しそうな顔をしていた。
この2人に、一体何があったのか。
(──なんて、ただマルタイとなっているだけの私が聞いてもなぁ。)
ここから警察が駆けつけて男を逮捕するまで、誰も口を開いたりはしなかった。