第17章 ちょっと借りるぜ。
シャボンディパークの観覧車のゴンドラはシャボン玉で出来ている。
その浮力を利用してか、この観覧車はヤルキマン・マングローブに設置された巨大な鎖で吊るされている。カナエとローはシャボン玉の中に入れられたベンチイスに向かい合って座っていた。
『たっ………高い………』
カナエは自分から乗りたいと言ったものの、普通の観覧車とは比べ物にならない高さに楽しむ余裕が無くなっていた。
「何だ、ビビってんのか」
『うぅ…高すぎて………何かすいません……もっと普通の女の子みたいにはしゃいだ方が船長さんも楽しいですよね………』
もっと素直で自分に自信があったら、社会に揉まれても、可愛い大人の女になっていたかもしれない。
(私ってつまんない………)
カナエは落ち込んだ。
「俺は調度良い。」
ローはいきなり立ち上がり、カナエの横に座った。狭いゴンドラの中ではかなり密着してしまう。
『揺れるっ!傾くっ!』
「俺はうるせぇ女は嫌いだ。」
『私も結構うるさいと思うんですけど………』
「クックックッ………自分で言ってりゃ世話ねェな。」
ローはカナエの首の後ろに手を回し、触れる様に唇を重ねてきた。
『あの……船長さんの…キスをするきっかけが良く分かりません……』
何か煽るような事を言っただろうか。先程、船でも怒っているかと思ったら突然してきた。
「俺はいつでもしてェんだよ」
そう言うと、ローはもう一度顔を近付けてきた。しかし、カナエは気づいた。ここは透明度抜群のゴンドラの中。両隣にも客が乗っている。
『船長さん!ここ丸見えですけど!!』
「見せつけてやれ」
二人が押し問答をしている内に、ゴンドラはシャボンディ諸島が一望できるてっぺんに差し掛かった。
『わ!良い景色!』
カナエは自分がとてつもない高さにいる事を忘れて、景色に見惚れていた。
すると、ローが今度は頬にキスをしてきた。カナエは顔が赤くなりながらも気にしない振りをして、景色を見ていた。
『船長さん、あの船って……』
カナエはシャボンディパークとは反対側のグローブに、漫画で見慣れた船が停泊しているのを見つけた。
「あぁ……海軍の船だな。」