第12章 覚悟しろ。
「あっ!キャプテン!カナエもいた!!
良かった~」
いきなり声がして、カナエは慌ててローから離れた。
暗闇の中からベポが現れた。走っていた様で、息も絶え絶えだ。
『ベポも……探してくれたの?』
「起きたらいなくなってて、キャプテンは何か焦ってるし、とりあえず夜道は危ないから慌てて探し回ってたんだぞ!」
『……船長さん…焦ってたんですか。』
ローは、言うんじゃねェとを見ているが、ベポは気付いていない。
「そうだよ。あんなキャプテン初めて見たな……とにかく見つかって良かった!早く船に帰ろ!」
カナエがローを見ると、目をそらし、恥ずかしそうに帽子を深く被ってしまった。耳が赤い。
(さっきまであんなに俺様だったのに……可愛い。)
3人は船がある岩場まで来た。
船員達は既に帰って来ている様だ。
「船長ー!ベポー!カナエー!おかえりなさーい!」
(おかえり……か……)
何年も独り暮らしだったカナエには、心に染みる言葉だった。
何も無い自分が、ここを帰る場所にしていいのか。
強い絆で結ばれた彼等の中に、自分の様な者が入り込んでいいのか……
カナエは船の前で立ち止まる。
(やっぱり迷惑でしか無い……)
「何やってる。さっさと乗れ」
『船長さん……私やっぱり……』
「カナエさーん!早くー!」
船を見上げると、既に船に乗っていたベポ、ペンギンやシャチ、その他の船員達も笑顔でカナエを待っている。
「言っただろう。あいつらはもうお前を仲間だと思っている。」
『……』
「お前、あいつらを裏切るのか?」
『……!そんな事言われたら……乗らない訳にはいかないじゃないですか……ずるい……』
「何とでも言え。お前を離さねぇ為なら、どんな手でも使ってやる。」
『こわ……』
「本当に可愛いくねェな。行くぞ」
ローは悪態をつきながらも、カナエに手を差し伸べた。
『……はい!』
カナエはローの手を握り、船に乗り込む。
起伏の無い平凡な道を歩んで来たカナエの、海賊人生が始まった。