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愛欲生活。【おそ松さん】

第4章 一松


そこにいたのは
一松兄ちゃんを止めてくれる
おそ松兄ちゃんでもなく


梨を買い終え帰宅した
カラ松兄ちゃんでもなかった。


『一松。』


その声音はどこか諭すように
弟を見守る兄の顔、


『チョロ松…兄さん…。』


『カラ松兄さんが
梨、買ってきてくれたよ。

皆も今、帰ってきたから
一緒に食べるから居間においで』


急かす訳でもなく
誘い言葉だけれど背後には
逆らうなと言ってる気がする。


私を押し倒していた
一松兄ちゃんは同じ事を思ったのか
渋々といったかたちで起き上がる。


振り返らずに背中を向けたまま
チョロ松兄ちゃんの横を通る。


ちゃんと行ったかその場で
見送ったチョロ松兄ちゃんは
私に振り向き微笑んだ。


『莉瑠も行くでしょ?』


いつもの表情に戻り
私は自然と頷いていた。


行く…皆に会いたい、と
願う私は確かにここに居る。


『待ってるから着替えてきなよ。

あと、その噛み痕も
手当してあげるから、痛む?』


ヒリヒリとはするけれど
大した事ないと首を振り
"平気"と意地を張った。


『………そう。』


見透かしたような目で
見つめられ苦笑いを浮かべた。


強がりなんてすぐに
見抜かれるのにしてしまうのに


布団から出ようとしたら
チョロ松兄ちゃんは背中を向き
こちらを見ないでくれていた。


下着から履くということさえ
バレているとは…。


チョロ松兄ちゃんを
待たせてはいけないと皆の前に
出られるような服装を取り出す。


『…ねぇ、チョロ松兄ちゃん』


『なに?』


着替えながら問いかければ
顔を向けずに答えてくれる。


『一松兄ちゃんは不器用さんだね。』


勿論それは私もなのだけど、


『…フッ、何それ。』


予想外の問いに
チョロ松兄ちゃんは吹き出した。


『まぁ…でも、そうかも。
そんな所も可愛い弟だよ、一松は。』


六つ子の中で兄2人、弟2人に
挟まれたチョロ松兄ちゃん。


一番の苦労人でありながら
中立を保ってくれる大切な兄。


面倒見がよくて安心できる存在
だから兄も弟も慕う、そして私も。


『嫌わないでやってよ、莉瑠。』



(六つ子の僕達を。)



その時、聞こえない声が聞こえた。



これは私の想像なのだろうか。


 

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