• テキストサイズ

十四郎の恋愛白書 1

第12章 No.12


「忘れ物ないか?」
「はい、大丈夫です」

ゆきの返事を聞いてからパトカーのトランクを閉める。

定食屋でおばちゃんと万事屋と別れ、オレたちは今、山崎の運転でゆきの家に荷物を取りに来ていた。
当分の間オレとゆきは入れ替わったまま過ごすことになり、ゆきの身体(オレ)の着物やら下着やらが必要なのだ。
初めて入ったゆきの家は、家自体は古いものの掃除は行き届いており、いい匂いがした。

もっと違う形でゆきの家を訪れたかった、と少ししんみりしながらパトカーに乗り込んだ。

「副長、副長の部屋の隣部屋を空けて掃除しておくように屯所に連絡しておきました」

山崎が発車しながら言う。

「おぅ、悪いな」

山崎のくせに気が利くじゃねぇか。

「ゆき、屯所に帰ったら近藤さんに報告して、これからどうするか決めよう」

隣に座るゆきに言う。

「隊士たちにも説明しなきゃいけねぇな。とりあえずおまえの部屋はオレの部屋の隣にするから」

「はい。よろしくお願いします」

不安なのだろう。ゆきの声は小さい。
オレはそんなゆきの頭をくしゃりと撫でる。

「大丈夫だゆき。なんとかなる」
「……そうでしょうか…」

ゆきは瞳を不安気に揺らした。

「ゆき、確かに風呂やトイレ、着替えと色々あるだろうが、少しずつ慣れて行くさ。お互い協力しよう」

オレが微笑みながら言うとゆきは俯きながらもコクンと頷いた。


しかしそんな2人の気持ちを踏みにじるように、遂にその時が来た。

屯所に着いた途端、オレの身体(中身ゆき)が“大”を催したのだ。それにつられたのかゆきの身体(中身オレ)も同じく“大”を訴え出し、オレたちは泣く泣くトイレでお互いの処理をした。

何コレ。どんな罰ゲーム⁉︎
拭くより拭かれる方が何倍も恥ずかしいんだけど‼︎

しかし一番大きな山とも言えるそれを乗り越えたらもう、怖いものはないのかもしれない。

ゆきもオレも変に開き直りが出てきた。

ゆきは初めに見せていたオドオド感はなくなり、オレ達は唖然とする隊士達の前でも落ち着いて事情説明できた。

/ 159ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp