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十四郎の恋愛白書 1

第19章 No.19


しかしすぐにニコリと笑みを作る。

「いいえ、何もありませんよ」
「いや、しかし…」
「土方スペシャル1つですね。お待ち下さい」

オレの言葉を遮って、ゆきは厨房へと消えた。

それからもゆきはいつもと変わらずニコニコと店内を配膳して廻る。しかしオレにはそのゆきの笑みが、どこかぎこちなく感じた。


そしてその日の持ち帰りマヨネーズには、いつものメモが付いていなかった。



オレ、何かしたか…?

腕を組み頭を捻るが、特に思い当たることはなかった。
今朝ゆきの家を出る時までは普通だった。いや、ゆきからの愛情がビシバシ感じられた。
それが定食屋でのゆきの態度はどうだ。まるで他人だった。店を出る時のお決まりの“いってらっしゃい”もなかったし、持ち帰りマヨの一言メモもない。
あのゆきが理由なくあんな態度を取るはずがない。きっとオレが何かゆきの地雷を踏むことをしたんだろう。

何がいけなかったんだ?

一昨日の夜あれだけヤッといて、昨日の夜もシたのがいけなかったのか?いやいや、ゆきだってメチャ善がってたし…。それに特に変なプレイもしてない。あくまでもノーマルだった筈だ。

それとも遊園地のお化け屋敷でオレがあまりにも怖がった事に幻滅したとか?そこを突かれると確かに痛いが、でもゆきは“ギャップがかわいい”って言ってくれてたぞ。

あ、帰りにお土産コーナーで買ったぬいぐるみ、ペンギンとクマで迷ってたの、あれ両方買った方が良かったとか?いやいや、ゆきの方から1つでいいって言ってたもんな。

…うーむ…。

考えれば考えるほどわからん。






結局、午後からの仕事もまたほとんど手付かずのまま時間が過ぎて行き、深夜。オレはゆきをビルの前で待っていた。

ゆきのことばかり考えていたら、いつもより随分早く着いた。 そしてまた昼間のゆきのことを思い出す。

今日何時間も考えて出た答えは、“倦怠期”。
付き合ってまだ3か月だが、もしかしたらそうなのかもしれない。
オレのゆきへの気持ちは高まる一方だが、ゆきのオレに対する気持ちは、もしかしたら冷め始めているのかもしれない。
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