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十四郎の恋愛白書 1

第18章 No.18


キスの合間に言ったオレの言葉にゆきは唇をゆっくり離した。そして黒い瞳をクリクリさせてオレを見る。

「また、総悟くんに悪戯されてるんですか?」

いや、そうじゃなくてですね。

「それとも、近藤さんと喧嘩したとか?」

それも違います。

「大丈夫ですよ。私が一緒に謝ってあげますから」

そう言ってオレの頭をよしよしと撫でる。もう完全に家出してきたと思われている。

「ゆき、そうじゃねぇ。そうじゃなくて、オレは…」

もう一度ゆきを抱き締める。
意外と天然なこの女にはやはりハッキリ言うべきだったのか。リベンジだ。

「おまえを抱きたい。おまえの身も心も、今夜、オレのものにしたいんだ」

ゆきがピタリと止まった。

「…ダメか?」

以前遊女が腰砕けになった甘い声をゆきの耳元で囁く。

しかしゆきは無反応だ。
え?ちょ、息もしてねーんじゃねぇの⁉︎

焦ってゆきを覗き込むと、トマトみたいに真っ赤になって一時停止していた。ついでに息も止めていた。

「お、おい!息しろ!息!」

トントンと背中を叩いてやると、「プハッ」と息を吸いだす。

「大丈夫か?」

ゼーハーする背中をさすってやる。

「トシさん、その声、反則…」

真っ赤な顔を両手で覆い隠すゆき。思った以上に効果があったようだ。

「ゆき、今日、おまえの家に泊まっていきたい。…いいか?」

再び抱き締めながら耳元で囁くと、やがてゆきはコクリと頷いた。

思わず心の中でガッツポーズだ。

「トシさん、明日お仕事は…?」
「非番だ。だから、明日は2人でどこかに行こう」

するとゆきは顔を上げ、華が開くように笑った。

オレは込み上げる愛しさを、ゆきの唇に噛み付くようにキスをしてぶつけたのだった。



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