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十四郎の恋愛白書 1

第2章 No.2



「ぐっ!」

ぼたぼたと地面を血が濡らす。

「きゃー‼︎」
「なんだ⁉︎どうしたんだ⁉︎」

近くを歩いていた女たちが悲鳴を上げ、周りの人達は逃げ惑い、辺りは一気に喧騒に包まれた。

オレは5人の攘夷志士らしき男達に囲まれていた。

失敗した。完全に周りへの警戒を怠っていた。

脇腹の痛みに内頬の肉を噛んで堪えながら、刀を構える。

見た限り、手練れの輩はいないようだが、このケガで全員の相手をするのはキツいな。

「真選組副長、土方十四郎、天誅‼︎」

一人の男が声をあげ、刀を振りかぶり向かってきた。辛うじてかわし、その男の背中を斬り付け、続けざまに横まで迫ってきていた男の腹を斬りつける。

「はぁっ、はぁっ、…くっ!」

もう既に息が上がっていた。出血が酷い。

ここは屯所からそう離れていない。騒ぎを聞きつけて、応援が来るかもしれない。
それに、そろそろ昼の見回りが屯所を出発する時間だ。今日のこっち方面の担当は、、、総悟だ!…最悪だ…!絶対サボってやがるだろ。いや、例え来たとしても、攘夷志士たちと一緒にオレの抹殺に加わるんじゃね?

「おらぁ‼︎」
ガキン‼︎
振り下ろされた刀を頭上で受け止める。
傷口から血が噴き出るが、構っていられない。
横から別の男が刀を突き出してくる。
咄嗟に頭上で受け止めていた刀の重心をズラし、突きをギリギリかわす。刀の重心をズラされた男はタタラを踏んだ。そこに正面から袈裟懸けに斬りつけた。

「はぁっ、はぁっ、」

あと2人。

しかし地に伏した3人も、まだ息がある。
マズイな。目が霞んできやかった。自分の息がうるさくて、周りの音も聞こえやしねえ。

2人の男は刀を構えながらゆっくりと間合いを詰めてくる。
頭がガンガンする。
とうとう、これまでか。

ガクッ

遂に地面に片膝が付いた。
刀を握る手に力が入らず、震える。

男達が一斉に地を蹴り飛びかかってきた。

ゆっくりとブラックアウトする中、見慣れた蜂蜜色が横切った気がした…。

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