第3章 未来は拓けてる
「どーせねみぃだけだしな、あんな練習。」
結局、影山くんも式練習はどうでもよかったのか、わたしに連れられ美術室へ訪れた彼は第一声「美術室ってここにあったんだな。」と。
きっと授業で誰でも数回は使用している筈なのだが、興味がない事はすぐに忘れてしまうタイプなのだろう。
まるで初めて来たような反応だ。
「そういえばこの間影山くん見たよ、体育館の前。先生に怒られてたでしょ。」
特に共通の話題がないので、どうでもいい世間話を切り出す。
「あー…、受験生なのにいつまでも残ってバレーすんなって言われた時か。
俺あんま成績よくねーから、尚更。」
「え、そうなんだ。影山くんって結構頭良さそうに見えるけど。」
言えば、罰が悪そうに目を逸らされた。
「そーいや俺も五十嵐サン見た。ランニングしてるとき。なんか一人で笑ってたけど。」
影山くんも気づいてたんだ。
しかも笑ってるのばれてたし。
「やべー奴だって思ってスルーした。」
「ひど。あれ影山くん見て笑ってたのに。」
「あ?なんでだよ。」
「怒られた後なのに、全く懲りてないなあって思って。」
一頻り笑えば、また沈黙が流れる。
普段は気にならない油絵の具の臭いがやけに鼻につき、窓を開ける。
刺すような北風と共に、体育館からは卒業ソングを歌う皆の声が聞こえてきた。
体育館で一緒に歌っていると、同じ繰り返しにうんざりしてくるが、こうして遠くから聞こえてくるそれに、なんだか物悲しい気分にさせられるのは、客観的に卒業の雰囲気に浸れるからなのか。
それとも、いま一緒にいる人、とかも関係してくるのか。