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戦国時代におちびちゃん達がログインしました

第2章 それぞれの思い


織田信長は不満だった。

(つまらん。大名どもや南蛮の商人たちの顔はもう飽きた。最近ろくにあやつの顔を見ていない)
手に持っていた扇子をぱちん、ぱちんと鳴らすと信長はふん、と鼻をならす。近くに無造作においておいた脇息(きょうそく)に頬杖をつくと、意志の強そうな眼が辺りを見回す。

彼をぐるりと囲むように置いてあったのは見事なものばかりだった。父から受け継いだ名刀に、かの有名な画人が描いた掛け軸、夜の闇をそのまま写し取ったかのような漆黒が美しい鎧兜(よろいかぶと)。目が覚めるような朱色が美しい手触りの滑らかな天鵞絨(ビロード)のマントや金の置時計、横文字で埋め尽くされた巨大な地図などは南蛮人から買い取った大変に珍しい品であった。しかしどの品も信長の心をとらえることは出来なかった。


周りのものを眺めることに飽きた信長は近くにおいてあった地球儀を側に寄せるとくるりと一回転させる。いつぞやの南蛮からきた貿易商が献上品として持ってきたそれを、優希が聞きなれない国の名前を呟きながら回し、にこやかに笑っていたのを思い出す。
細い指先が国を示す線の形をゆっくりとなぞる姿は童のようで面白かったのを覚えている。



優希がなぞった線を同じようになぞりながら信長はふっ、と面白そうに笑う。



(何か面白いことであやつの笑う顔を存分に堪能できないだろうか)

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