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大輪の花は刻を越えて咲く【イケメン戦国】

第4章 めぐりあい




美しい女だと彼は思った。女が纏う着物は見たことがないもので、たおやかな女の体つきを十分すぎるくらいに表現している。肌をいささか露出し過ぎだと感じるが決していやらしく見えなかった。むしろしなやかな手足がよく映え、健康的で爽やかな装いにさえ見えた。微かに香る香りは蜜柑や柚子のそれと少しだけ似ている気がするがそのなかに化粧(けわい)特有の鼻につくような香りはない。眉を微かに寄せて眠る女の輪郭に沿うように、結われていない髪はさらさらと流れている。


眠る女を思わず見つめてしまっていた彼にひゅう、と冷たい風が強く吹き付ける。風向きをしばらく探るように見つめると彼は錫杖を近くの木に寄り添わせるようにかけた。そして女の腰と背中に腕をかけるとゆっくりとその体を抱えあげた。指先や手のひら、胸元に感じる女の柔らかさと暖かさに少し戸惑いを覚えながらも、彼の目元には優しげな光が灯っていた。





かけていた錫杖を手にとり、眠っている女の無防備な顔を一瞥(いちべつ)すると、彼はゆっくりと歩き出した。静かに、ゆっくりと歩む彼とその腕の中で眠る女を月が静かに照らしていた。


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