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【おそ松さん】色松恋物語(BL長編)

第8章 新境地


10月××日

一松side

「カラ松、一松、気を付けて」
「うん」「ああ」

チョロ松兄さんが言って、他の兄弟達も頷く。

俺達は先日カラ松が運動会で貰ったペアチケットで二泊三日の温泉旅行に出かけるところだ。

「俺のハートフルなギフトを楽しみに待っていてくれブラザー」
「カラ松、俺地酒がいい!」
「おそ松兄さん、俺達そんなに金持たないから。そんなことよりチョロ松兄さん、猫達の事よろしく」
「うん、心配しないで旅行楽しんで来いよ」

そんなことよりって、と目元を腕で擦りながら泣いたふりをするおそ松兄さんをトド松と十四松が押しのけて前に出てくる。

「一松兄さん、思い出沢山作ってきてね!」
「これ、僕とトド松から!旅のお供にどうぞっす!」

そう言って十四松が小さな袋を手渡してきた。
開けてみてとトド松に言われて袋の中をのぞく。

「か、カメラ!?」

紙袋の中にはインスタントカメラが入っていた。

「流石マイブラザー!気が利くじゃないか、ありがたく頂くぜ!」
「滅多に無いことだから、思い出ちゃんと写真に残した方がいいよ!」
「ありがと」

写真とか柄じゃないけど弟二人の気持ちは嬉しいので素直に礼を言う。

「一松、名残惜しいが、もう行かないとバスの時間に間に合わない」
「じゃ、行こ」

まだ余裕はある気がしたけど、早めに行った方がいいかとも思い一歩踏み出す。
俺とカラ松は行ってきますと手をあげ駅に向かって歩き始めた。

後ろではお土産待ってるねと言う兄弟達の声が聞こえていた。



駅へ向かう途中、カラ松が駅に向かうのとは違う道へ入っていった。
俺がどこ行くんだよと声をかけるとカラ松はにっこりと微笑んで、「猫に会いに行きたいだろう?」と振り返って俺に手を差し出した。

こいつは何でこんなにも優しいのだろう?
この優しさを独り占めできる俺は幸せ者だ。
この優しさを、差し伸べてくれる手を握れる日が来るなんて。

そんな事を考えていたら、気が付けば外にもかかわらずカラ松の手を取っていた。
路地裏までずっとそうしていた。


「珍しいな、一松が外でこんな風に俺の手を握ってくれるなんて」
「朝早くて人通りもないし特別に」

「お前のお陰で旅行も行けるし」とお礼を言っていなかったのでお礼のつもりで言った。
カラ松はそれに気づいてくれたのかきゅっと手を握り返してくれた。
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