第29章 水が流れ出す
「ヴァカ言ってないで平手打ち覚えなさいよ!迷惑なのよ、殴られる方はあァァぶべッ!ばぶッ!テ、テメェこの、反す刀で往復ビンタかッ!いい加減にしろぐらァ!!!!」
「手を開いて遠慮してやったぞ。文句あるか」
「そんな指輪っだらけの骨張った手でビンタ繰り出して何処に遠慮があるってのよッ、ええ!?」
「うるさいヤツだな。何をしても文句ばかりだ。仕方ない。ならこれを使うか…」
「仕方ないじゃないじゃない!そのゴツい銃を仕舞いなさいよ!何処に何持ち込んでんのよ、非常識ねン!?ボケてきてんの、アンタってば!!」
「至って明晰だ」
「ならよく考えなさいよ!この至近距離で撃たれたらスプリンクラーの水みたいに飛沫くわッ!アンタのシワを潤しちゃうわよ、アチシ成分がッ!」
「おぞましい事を言うな、腐れ。考えただけでシワが増える…」
「おぞましいのはどっちよ!シワ増やしたきゃアチシの見てないとこでやってよね!?アンタこれ以上見苦しくなったら、ホントヤバイわよン!?アチシを鳥肌で殺す気!?」
「鳥肌で死ぬのか、貴様は。随分簡単に出来てるんだな。思った以上に人らしくない。不憫になって来たぞ…」
「ふざけんじゃないわよ!アンタに不憫がられるくらいなら花瓶になるわよ、アチシ!」
「ああ、花殺しの花瓶になるのか。いいな。如何にも貴様らしい。しかしそうなると今度は花が不憫だな。そう思わないか、花殺し」
「花殺し!?花のようなアチシが花殺し!?上陸しただけでオーストラリアもブラジルも砂漠化させるようなババァにそんな事言われたくな…。……。ああ、だからアンタ、砂漠にいるのねィん?納得ぅー!」
「…馬鹿が…」
「馬鹿って言ったヤツが馬鹿なんですぅー、バッカねィん、アンタ!がはははは」
「ふん?なら貴様、馬鹿なんだな」
「アチシはバッカって言ったけど馬鹿なんて言ってないわよーんだ」
「…馬鹿だな…」
「しつこいわねッ、バッカババァ!」
「黙れ、馬鹿」
「馬鹿馬鹿言うんじゃないわよ!あったま来んわね、馬鹿!…あッ!」
「ほれ見ろ、馬鹿だ」
「…何なんだ、この二人は。生き別れの物凄く仲の悪い姉弟か何かか?」
思わず呟いたカクに、カヤンが小声で答える。
「物凄く仲の悪い赤の他人だよ」
「…ああ、そうか。そうじゃろうな。これが身内じゃやりきれんわい…」
