第3章 虹村家の娘 3
ベッドは形兆がバッドカンパニーで完全にぶち壊したあと、億泰に削り消してもらった。
あれ以来私は形兆の部屋で寝ている。
億泰はぶち壊れたベッドに不信感を抱いていたけど、スタンドが暴走したと言ったらあっさり信じてくれた。
一緒のベッドで寝るのも、「兄弟なんだから普通」の一言を鵜呑みにしている。
億泰は血のつながりの有無を気にしていたようだったけど、分かってくれたらしかった。
形兆とはあれから億泰が家に居るしで一回もしていない。
それと、私はあの回数でも妊娠していなかった。
私自身かなり驚いたが、形兆曰く、実は夕飯の時にピルを飲ませていたらしい。
俺の子どもを孕むのを本気で嫌がるかどうか気になってやったと言っていた。
そんなこんなで私達は兄弟でありながらそういう関係になったわけだが、毎日ひっそりとキスをしては物足りなさに悶えていた。
そんな矢先、事件が起こる。
形兆と億泰よりも帰るのが遅くなり、一人で家路を歩いていた。
すると、家の方から大きな爆発音がしたのだ。
それきり音はしなかったが、何事かと慌てて家の門から転がり込んだ。
玄関に続く赤い点。
家の中にも続いており、所々血溜まりもあった。
恐怖と不安を抑えて二階へ上ると、血まみれの形兆が横たわっていた。
「…ッ!形兆ッ!!」
慌ててそばに駆け寄り、傍らにしゃがみ込んで声を掛ける。
息はあるが、気を失っているのか目を覚ましてはくれない。
と、上の階から足音と話し声が聞こえてきた。
…許さない。
気付けばそう声に出していた。
形兆の頬を軽く撫で、部屋を出て階段を登る。
目的の場所には、別な高校の制服を着た男子が2人いた。
父の姿を見て動揺しているところだった。
「動くな」
自分でも驚くほど冷ややかな声。
2人が同時にこちらを振り向いたのと同時に、コピーしていたバッド・カンパニーを出現させる。
「なっ…誰だテメェ!?」
「それはこっちのセリフだッ!動いたら撃つぞ」
リーゼントの男に怒鳴り声をぶつけ、歩兵に攻撃準備をさせた。
「…ハン、なんであんたがバッド・カンパニーを操れんのかしらねっすけどよぉ…俺にゃあ勝てねっすよ!」
男がスタンドらしきものを出す。
攻撃せず、自身のそばで待機させている。
様子見ということか。
「…あんた、俺らを殺すつもりっスか」