第1章 虹村家の娘 1
私は虹村家の長女になるようだ。
長女といっても、上に兄が一人、同い年の弟も一人いる。
兄や弟といっても血は繋がっていない。
ものすごく遠~い親戚なのだ。
そもそも私には親戚が少なく、両親を事故で亡くしてから親戚間をたらい回しにさせられていた。
そんな中、遠い親戚である虹村家に押しつけられたというわけだ。
何代も前から会ってすらいない。
親戚のおばさん達がずっと昔の本やら何やらを引っかき回してようやく見つけたくらいなんだから。
ここまでして私を押しつけようとする理由は、私にある。
だから別におばさん達を恨んだりとかはしていない。
私には、産まれたときからずっとおかしな力があった。
私のそばにずっといるおかしな物も見えた。
私のおかしな力は、他人になれることだった。
おかしな物が触れた人の姿になり、どうすればその人らしく振る舞えるかも手に取るようにわかった。
幼い私はそれをよくやって遊んでいた。
もちろん、大人達は私を気味悪がり、今回の事故の事までわたしのせいではないかと噂し始めたのだ。
両親は私と似たような力をもっていた。
両親もおかしな物が見えていたし、理解を示してくれていた。
…本当に、母さんも父さんも優しくて頼れる大人だったのに。
しかも虹村家は故郷から遠い。
M県S市壮枉町。
母親は病死しており父子家庭。
どうせ居候が増えて邪魔だとか思ってるんだろうな。
電話の対応だとか、私の話とか全部長男がやってたらしいし仕事忙しいんだろうな。
故郷を離れる電車の中、そんなことを延々と考えていた。
虹村家につく頃には、もう夕方だった。
朝早く出て良かった、夜になる前になんとかついた。
それにしても、家自体は大きいがかなり古い。
窓は板が打ちつけられているところもあるし、正直ゾッとする。
恐る恐る重たい門をあけ、玄関まで行くと、タイミングよく扉が開いた。
「!あぁ、兄貴が言ってた奴ってお前か」
私を見るなり、顔にバツ印の傷のある男がそう言った。
虹村億泰。そうに違いない。
「…君が億泰?」
扉をくぐりながら聞くと、そうっすよ、と答えた。
短ランの改造制服、1カ所だけ染めた頭髪。
良かった、と安堵した。
私と同じ、不良なんだ。
私も、今は普段着だが制服は好きなように改造している。