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Welcome to our party 2 【気象系BL】

第12章 金木犀の涙 by うめ


「相葉くん今日は早いわね」


「試験前なんで友人と集まって勉強会をしようと」


「頑張ってね」


「ありがとうございます。行って来ます」


下宿先の隣に住む奥さんと挨拶を交わして俺は大学までの道を歩く。


少し肌寒くなってきた季節。
コートに身を包んでいても身体が震えた。


まだ空が白み始めたばかりの町中はほとんど誰も出歩いておらず、いつもと違う景色に見える。


狭い小道を歩いていると…ふわりと甘い香りが漂った。


「これは…」


立ち止まると十字路の右手に伸びる細道。
その先を覗き込むとその先に見えた数本の金木犀に花が咲いていた。


「これか…」


俺はそのまま右手へと進み、金木犀の木を眺める。


濃い橙色の小さい花から香る甘い香り。


ふと視線を感じ顔を上げると…俺の思考は停止する。


塀の向こうの大きな建物の二階の露台に腰掛ける若い…男?


肩まで伸びた漆黒の髪。
太い眉毛にハッキリした瞳。
真っ赤な唇。
着崩れた着物からは白い肌がうっすら浮かんでいる。
その姿はまるで…異国の者かと思う程の美しさを湛えていた。


その美しい人は…煙管から煙を吐きながらにっこりと俺に向かって微笑んだ。


「あ…」


何も言えずにずっと見つめ返していると…彼が口を開いた。


「学生さん?」


「え?あ…相葉…雅紀です」


「雅紀…。俺は…潤」


「潤…」


「ここは貴方の様な人が来る場所じゃないよ。学生さん」


「え…」


そういうとその窓はパタンと閉じられる。


俺はそのまま茫然と立ち尽くしてしまっていた。

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