第5章 衝突 (火神視点)
激情が一気にたき付けられた。
一瞬頭が真っ白になって、気が付けばオレはアイツの襟首を掴んでいた。
「ふざけんなっ!バスケ出来ねぇテメェにそんな事言う資格があんのかよ!!」
収まることを知らない怒りが体の奥から込み上げる。このままぶん殴りたいとすら思えて、俺は咄嗟に拳を振り上げる。
周囲がざわつく。何だよ、やめろって。
「……その言葉、そのまま君にお返しするよ」
「ッ……!?」
物怖じするどころか怯むことなく、むしろ不自然なまでに歯を見せて不気味に笑う。
そんなアイツを前にして俺はその時なぜか腕の力が抜けた。
その隙を見てアイツは俺の手を外した。襟を直すと、俺に顔を向けることなく入口の方へと歩いていく。
「ッオイ!!」
我に返り、声を張り上げて呼び止めようとした。
だがアイツは足を止めるどころか、ひらひらと手を振るだけだった。
「テメェは俺がバスケ出来きてねぇって言うのかよ!!」
声を張り上げ、思いの丈をおもいっきりぶつけた。
それでもアイツが振り返ることは無かった。