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【落乱】花立つ人

第2章 ほうっておけない質(たち)なんです、の段。


「やっぱり? やっぱりってどういうことですか? せんせー」
「椿さんは、松千代先生の妹さんだよ」
「…え?」
 土井先生の言葉に、三人はぽかんとして椿を見つめる。

「「「……うっそだー! 全然似てない!!」」」

「え、あの、兄をご存知で?」
「ええ。私はお兄さんと同じく、忍術学園の教師をしています、土井半助と申します」
「まぁ…いつも兄がお世話になっております。あの通り、兄は…見た目に反して恥ずかしがりやで…」

 兄、松千代万は巨漢で、もじゃもじゃ頭にもじゃもじゃの髭、体毛ももじゃもじゃのいかつい男である。

「妹さんがいらっしゃる、ということは前に一度お聞きしたことがあるんですが…」
(似なくてよかったですねぇ)
 土井先生は最後の一言を心の中に閉まった。

「あれ?ってことは…」
「松千代先生はとうに家に着いてると思うな」
「そうだよね、だってもう夏休み半分過ぎてるもの」
「えっ?!」
「二年生がおれたちみたいに補習受けてるとは思えないしなー」
「置手紙は読まれてると思いますよ…残念ながら」
 土井先生の極めつけの言葉に、椿はがっくりと肩を落としたのだった。






「すみません、お世話になりました」
 土井先生の家の前で、市女笠を被った椿が頭を下げる。
「いえいえ。松千代先生にどうぞよろしくお伝えください」
「はい。ところであの、土井さ…土井先生」
「なんでしょう?」
「土井先生は、その…ご結婚は?」
「いえ」
「では、その…恋仲の方がいらっしゃる?」
「いえ、いませんが…?」
 一体何なのだろう?と土井先生が首を傾げる。
 しかし椿はその答えに満足したのか、嬉しそうに笑って、
「そうですか! ありがとうございます。それではまた」と帰っていった。


「せんせー、椿さんに色々聞かれてましたね」
「それではまた、って言ってたもんな」
「うんうん!」
 にへらっと笑う三人に、土井先生はまたも首を傾げるのであった。



 ~おわり~

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