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そうして君に落ちるまで

第1章 距離感調節中(リンク)









「逃げないから!ちゃんと落ち着いて話しましょう?!私も悪いけど!ハワードさんもムキになりすぎ!!」


頭突きをしてきた彼女はおでこを少し抑えるほどで私よりダメージは小さそうだ。彼女はだいぶ石頭らしい。

「…すみません…」

「…こちらこそ…」

無言の間。

どうしたものか。先程まで幾つもの言葉や思いが溢れていたのに、冷静になった頭にはそれが自分から生まれたものだとにわかに信じられなくて言葉に詰まる。


はぁ…


ポツリと彼女からこぼれたため息に胸をえぐられるような感覚を得る。

何か、
何かを言わないと





なにを





「…本当はね。」

ポソリと、彼女の声が耳に落ちる。

「本当は私もハワードさんの方が言いやすいんですよ。慣れちゃったっていうか。」

そらしていた目を彼女に向ければ、カチリと視線が交わる。

「でも、科学班っていうか、本部に来てから今まで、特にそういう男女を気にする感じのなかったのに、急に好きなのかーとか茶化されて、それが嫌だったんです。」

頭突きの際に離れた私の手に、彼女がそっと手を重ねる。

「だからごめんなさい。名前で呼ぶのは2人だけの時でも良いですか?ていうかハワードさんも、私のこと名前で呼んでください。そっちの方が呼ばれ慣れてるんで。」


困ったように笑う彼女に目を奪われる。
重なる手がじわじわと熱を持つ。


名で呼ばれる度に、視線が重なる度に、手が微かに動く度に、意識はせわしなく動き、着地点を得ない。


「ハワードさん?」

「…いえ。」


落ち着かない。けれど嫌じゃない。







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