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そうして君に落ちるまで

第1章 距離感調節中(リンク)













その日、胸のつかえがなかなか取れる様子はなく、寧ろ悪化しているように感じた。

監視対象である白髪の少年はそんな事などつゆ知らず。気持ちよさそうに熟睡している。


「……」


散歩がてら、水を飲みに行こう。


広く暗い廊下を歩き、食堂へと入れば、そこは小さくまばらに明かりはついているが、夕食時とは比べ物にならない程、静かで暗い。

だだっ広い食堂の、大きな机の中に、ポツンと動く影が見えた。



「…高凪沙優…さん?」

思えば彼女の名を、声に出したのは初めてかも知れない。そんな私のぎこちない問いに応えることはなく、彼女は机に向かって突っ伏していた。

徹夜疲れで机に沈む科学班女性を起こすことはもちろん私の仕事には含まれない。

かと言ってこのまま放って置くのは気が進まなかった。

「高凪さん、起きてください。高凪さん。」

軽く揺すれば「んー」とだけ返事をされるが起きる気配は一向にない。

「んーではありません。起きてください。自分の部屋で寝なさい。」

「はーい…」

返事をし、顔を横横に向けるがその目は完全に塞がれている。置いていこうか。


「……沙優さん」

「うん…わかったわかった…」

「わかってないだろ…」


仕方がない…。

彼女の隣に腰をかけ、肩を掴み、無理やり体を起き上がらせる。

「あと5分…」

「部屋で寝てください。」

「んー…………んっ?!えっ?」

電気が通ったかのようにビクッ!と身体を反応させ、バランスを崩しそうになる彼女の肩を、しっかりと支え直す。ようやく脳みそを動かしてくれたらしい。


「えっ?ハワードさん?ココどこ?何時?あれ??」

「落ち着いてください、ここは食堂で今は夜中の1時すぎです。」

「ふぇ…あ、1時か…良かったーもう朝かと思った…」


脱力した彼女はそのまま私の肩にもたれかかってきた。

柔らかな黒髪は私の頬に触れ、服越しであるのにも関わらず、触れているところに強い熱を感じる。さすがに、これはよろしくない。

「……あの…」

「えっ?!あ、ごめんなさい!つい癖っていうかすみません。」

「癖…?」

自分の眉がピクリと動くのを感じれば、慌てて離れた彼女はガーッと顔を赤くする。







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