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そうして君に落ちるまで

第5章 いつもの(神田)







予想外の質問にぽかんと口を開けていれば、綺麗な顔が眉をひそめる。


「…なんだその顔は。」

「えっ、あ、ごめん」

いやだって

「まさか私の事覚えてるとは思わなくて…」

「…?どこかであったか?」

「え?」



あれ…?
なんで会話がかみ合わないんだ?
てかやっぱり覚えてないってこと?
でも、じゃあなんで



「だって今風邪治ったかって…」

「…いつものに戻ってるから。」

配置が。あと香りも。









………つまり蕎麦が…?



「ふふっ、はははは…!!」

「?!」


思わずカウンターをバンバン叩いて笑ってしまったら、神田くんはギョッとした顔で少しのけぞる。
いやでも無理でしょコレは。


「だって…顔じゃなくて蕎麦で判断とか…2回も会ったのに…」

「あ?」

未だに頭にハテナを浮かべる彼は、本当にあった事は覚えていないようだ。


「はーぁ、そっかー、覚えてないか。あーでも良いね。なんだろうね。」


お盆の配置だけで、
香りだけで、

私の作ったものとすぐに気づいてくれて。

普段自分から声をかけたりしなそうなのに、声までかけてくれて。



あぁ、やっぱり。
そうだ。私は彼に食べてもらって、空になったそのお皿が見たかったんだ。


蕎麦の人よ

心の友よ




「ありがとう。神田くんが気づいてくれて凄く嬉しいよ。」



にこりと笑えば、長い睫毛の映えるその目は少し驚いたように瞬かれた。










■□■後日談


「あ、神田くん。蕎麦だけじゃダメだよ。というわけで今日はかき揚げと煮卵もつけといたから。」
「…勝手にしろ。」
((あの神田が素直に聞いてる…?))







>いつもの.fin

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