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そうして君に落ちるまで

第2章 ifの願い(コムイ)●






きっかけはリナリーの誕生日前。

ふらりと寄ったそのお店は小ぢんまりとしながらも文具やアクセサリーなど色々なものが売っていた。


「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

店内を眺めていると柔らかな笑顔の店員さん。

「妹への誕生日プレゼントを探しに」

「あら、いいお兄さんね。妹さん、どんなのが好きなんですか?」

「それが…」


それが、ひどく困った事にわからないのだ。

環境柄、彼女が自分にワガママを言うことはなかった。去年か一昨年、悩みに悩んだ挙句、本人に聞いて「兄さんとみんながいてくれればいい」なんて言われた時には泣きそうになったのを覚えている。


「でもやっぱりさ、こんな時くらい喜ばせたいと思うんだよね。」

「…そっか。」


話を聞く彼女の目は優しく、真摯に話を聞いてくれる為かするすると言葉が口から零れる。

「ねぇ、妹さん趣味とかは?どんな性格?」

「趣味…?」

リナリーの趣味といえばやはり科学班へのコーヒーの差し入れだろうか。道具を自分でちょこちょこ買い足しているし、淹れているときも終始笑顔で楽しそうにしている。

「でもあれはコーヒーを淹れるだけが楽しいんじゃなくて、きっと配りがてらみんなと会話するのが楽しいんだろうな…ジェリーともよく話しているし…」

「みんな…?」

「…学者をしていてね。妹も手伝ってくれているんだ。」

「へぇ〜〜すごいね。」

彼女はふわりと笑いながらそういうと、うーんと悩んだ。

「話聞いているとやっぱり花かなぁ?お世話好きっぽいし。大きめのね。それでみんなが通るところに置いてもらうの。あとね、髪飾りとか、服とか。とにかく彼女と他の人の会話のきっかけになるような物がいいと思いますよ。漠然としてて悪いけど。」

「花かぁ…」

プレゼントの定番。
世話が面倒とかもらっても困るというマイナスイメージが強いが、リナリーなら楽しんでしてくれそうだし、アレだけ人のいる教団だ。花好きな人が手伝いをしてくれるかもしれない。

何より花を愛でる妹の姿はとても可愛い。


「花屋なら、少し行った先のところがオススメですよ。」

彼女はサラサラと紙に地図を書き手渡してきた。

「あ、でも。」

ここまで相談に乗ってもらって手ぶらで帰るのはどうなのかと言葉に詰まる。

それを察した彼女はまたふわりと笑った。




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