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If...

第11章 10月10日


「ルミ!」

母が叫んでこちらに走ってくる。
早いはずなのに、その光景はスローモーションのように見えた。


「ルミ、怪我はない?」

母が私の前で立ち止まって優しく聞いてきた。
私は、ただ頷くことしかできない。

「そう、良かっ…ガハッ!」

母は話している途中で血を吐いた。

『ママ!?』

私はあわてて母に近づく。
母の腹から、九尾の尾が突き出ていた。

『ッ!?』

私は声にならない悲鳴を上げる。
医療忍術を使えない私は、どうすることもできず涙をながす。
私はこの時、パニックになっていて、歌遁を使えばどうにかなるかも知れないなんて思い付きもしなかった。


「ルミ、ママの最後のお願い、聞いてくれる?」


母はそんな私に優しく話してかけた。
最後なんて言わないでと叫びたい気持ちを押さえて、私は母を見上げた。


「生きて!」

母は叫ぶように、しかし優しくそう言った。
私は頷くと母に抱きつく。

九尾の尾が腹から抜け支えを失った母は地面に膝をついていた。


「もっとルミといたかったな、一緒に買い物したり、お料理したり…花嫁姿も、見たかった!」


母は涙を流しながらそう言って私を抱き締めた。
しかし、母はすぐに私を離すと、泣き笑いの顔で告げた。

「逃げなさい!」

私が首を横に振ろうとした瞬間、隣に人が現れた。


「シスイ、ルミをよろしくね?」

私の隣に現れた父に、母は安心したようにそう言うと、微笑んだ。

そして、父が頷くのを確認したその瞳から光が消えた。


『ママぁ~!』


私は泣きながら母にしがみつく。
しかし、母の腕が私を抱き返すことはなかった。

父は無言で私を抱えると走り出した。

(母が死んでしまった。私のせいで、私が弱いから…。)

父に抱えられたまま私は絶望していた。
結局、クシナ達を助けるどころか、母親まで死なせてしまった。

絶望する私の目に、消えて行く九尾が映る。

(あぁ、あの二人も死んでしまった。)

絶望していた私は、面を被った男たちが二人のそばから、子供を抱えて消えて行く姿を見ても、何も気づかなかった。
そのことの重大さに気付くのは数日後になる。






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