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第10章 言霊


ル「ルミには、前に少し話したわよね、おじいちゃんのこと。」

母がそう言うと、父が驚いた顔をした。
父はどうやら母の父親の一族について知っていたようだが、今から話す事がその事に関係しているとは思っていなかったようだ。


ル「今日、忍びに拐われたとき、不思議な事がなかった?」

母が確信めいた口調で私に聞いてきた。
私は、突然動きを止めた男たちを思い出して頷いた。


ル「やっぱり。その瞬間を見た訳じゃないからいいきれないけど、それは言霊の力よ!」


母の言葉に、言霊?と父が呟いた。
母は頷くと話を続けた。

ル「言霊は、簡単に説明すると、言葉にしたことを形にする力よ。私たちの歌遁は言霊の力を使っていて、歌にのせることで力を使っているの。わざわざ歌を歌うのは、そうしないと力が働かないから。」


母は、そこまで話すと、私をじっと見つめた。
父も、何かに気づいたのか、微妙な表情をしている。


ル「だけど、ルミが使ったのは、歌遁じゃなくて、おそらく言霊そのものだった。
…今まで、歌遁を使う一族で言霊の力を使えたのは、歌遁を作った初代一人と聞いているわ。そして、言霊を使った初代はそのせいで死んだとされているの。」


母の話しに、私と父は唖然とした。


ル「だけど初代より力があったのか、使ったのが言霊とは違ったのかはわからないけど、ルミ、あなたは生きてるわ。でも、これからはその力を使っては駄目!分かった?」



母はそう言うと、私が頷くのを確認して微笑んだ。


ル「話はこれだけ!それじゃ、夕飯にしましょう!今日は久しぶりに帰って来たからご馳走作っちゃうわよ!」

母の明るい声に、重苦しかった空気が一変した。
私たちは今日の事件がなかったかのように、いつもと変わらず食卓を囲んでいた。
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