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HQ商社 営業3課へようこそ!【HQ】

第7章 梅雨。






『灰羽くん、ご馳走さまでした。』
「ご馳走さまでした。」

そう月島くんと言えば灰羽くんはにかりと笑う。

「こっちこそ、仕事、手伝ってもらってありがとうな?」

3人で改札を抜け、ちょうど良く滑り込んできた電車に乗る。
なんとなく外を見れば、また降り出した雨。

『あ、雨。』

「うそ…傘、会社に置いてきちゃった。」

「じゃあ、これ使いなよ。」

そう言って月島くんは灰羽くんに傘を渡す。

「椎名サンとつかって。」

タイミング良くドアが開き、月島くんは駅に降りた。

「月島は傘、どうするんだろ…」

隣からそんなつぶやきを聞いた気がした。

扉が閉まる直前、私は電車から飛び降りた。
後ろを振り向けば、灰羽くんの驚いた顔。

私は急いでカバンから傘を取り出し、「傘があるから大丈夫」と意思表示をする。

灰羽くんを乗せた電車が走り出したのを見送ると、私は走り改札のある階に向かう。
改札を抜けると、月島くんは今まさに雨の中に走り出そうとしている。










『つきしまくんっ‼︎』




私の声に振り向いた月島くん。

「なんで…」

『私、傘持ってて…だから…』

弾んだ息を整えながら月島くんに近づく。

「別に良かったのに…」

『でも月島くん濡れちゃう。』

「雨に当たって体調崩すほどやわじゃないよ…」

月島くんは、はあとため息をついた。

「ねえ、2人きりになったらまた何かされるって思わなかったの?」













「それとも期待してるの?」

おつきさまみたいな瞳が私を見つめる。



























『わかんない。
でも、放っておけなかったの。』

月島くんがすごく寂しそうな顔をしていたから…







「僕のことなんて…放っておいてよ…

優しくしないで。」





困ったような、泣きそうな顔をしてぽそりと呟く唇を今日は私から塞いだ。












『…連れて行って、お家。』


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