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ねこわん‼︎【HQ】

第30章 夏、避暑にて。



ふと目覚めれば隣からは安らかな吐息。
今だに闇に染まる外の景色を見るために、私を抱きしめる腕の中から這い出ると、枕元に置いてある未開封のミネラルウォータを半分ほど一気に飲み干し長く息を吐いた。
空調の効いた部屋なのに、体はしっとりと汗や何かしらの体液を纏っていてやや不快。最中に床に落ちたらしい浴衣を纏い軽く帯を締めると、飲み物と携帯の端末を持ちベランダに出た。

じわ…と感じる蒸し暑さ。
冷房に慣れた肌は、まとわりつくような外気温に思わず身震いをしてしまう。露天風呂のお湯を溜め、虫避けに置いてある蚊取り線香を付けると隣の椅子に座る。溜まる湯の音と川のせせらぎを聞きながら目を瞑ればそのまま眠ってしまいそう。しばらくその音を聴いていれば、からからと背後の窓が開く音。瞼を開き後ろを向けば、下着のみを身につけたリエーフが窓を閉めていた。

『起こしちゃった?』
「目が覚めたら美優さんいなかったから。」

背後から回る腕が私を抱きしめる。首だけで後ろを見れば、そのまま柔らかく口付けられた。

「せっかくの露天風呂、1人で入るなんてずるいっす。」
『いいじゃない。旅の醍醐味なんだから。』

ゆっくりと体を反転させ背もたれ越しに抱きしめると、柔らかな唇が顔中に降ってくる。

『んっ…お化粧…どろどろ…』
「美優さんが寝ちゃった後にいつも通り。」

…流石リエーフ。
私が寝落ちるといつもメイク落としのシートで顔を拭き、蒸しタオルで顔を保湿、最後に化粧水と乳液を塗ってくれる。ありがたいけれどできれば寝落ちる前に止めてほしいと思うのは贅沢なのかな…

抵抗もせずに口付けを受け入れていればふいに止まる口付け。離れた体はお風呂のお湯を止めると、その場で下着を脱いだリエーフは私の帯を解く。しゅるり、と衣擦れの音と外気に触れる肌。浴衣が腕から抜ければそれは椅子にかけられた。
何も言わずに引かれた手。先にリエーフがお風呂に入れば私も湯に浸かる。リエーフに抱かれるように足の上に乗るように浸かると、リエーフの肩に頭をもたれさせた。

『貸切のお風呂、朝に予約しててよかった…』
「ご飯7時半からだから食べたらゆっくり入りましょうね?」
『…えっちなことしないでね?』
「…期待してます?」

期待させるような物言いに頬が染まる。恥ずかしさを隠すようにもたれさせた頭を挙げると肩口に軽く噛みついた。

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