第12章 灰羽リエーフの1日 2017
PM9:43
風呂を上がると美優さんがリビングへと促してきた。
今年も作ってくれたのかな、とワクワク。
リビングで待って入れば、かちゃかちゃと食器の鳴る音。
美優さんがケーキと一緒にやってきた。
『おまたせ、リエーフ。』
テーブルに置かれたケーキと小皿。
ケーキは…モンブラン?
大きなタルト生地にのる黄色味がかったモンブランのようなクリーム。
なんだろう…と悩んでいればその間に美優さんはそのケーキを切り分ける。
と、中から出てきたのは生クリーム。
『これ、かぼちゃのモンブランなの。どうぞ?』
す、と差し出されたモンブランは美味しそうで早速スプーンですくって食べようとすれば美優さんが立ち上がる。
「どうしたんですか?美優さん。」
『あ…コーヒー持ってこようかなって。』
「俺、持ってきますよ?いつものマグカップでいいんですよね?」
コーヒーくらい俺が持ってこようと立ち上がれば美優さんが慌てる。
『私が持ってくるから大丈夫っ!』
そう言い残し、美優さんはキッチンに走っていった。
ケーキはあるし、あとは飲み物だけだよな…
なんだろう…
何を隠しているのか気にしていれば美優さんが戻ってくる。
でもキッチンから持ってきたものは想像よりも明らかに多い。
っていうか大きい。
「…美優さん?なんすか、このでっかいの。」
隠すように布で覆われた何かを指差せば少し困った顔の美優さんが笑う。
するり、と布を取るとぽつりと美優さんは言った。
『余った材料で作ってみたけど…なんか誕生日って感じじゃなくて…』
とん、と目の前に置かれたのは普通より小さなかぼちゃ…
かぼちゃ⁈
でもよくよく見れば中身はかぼちゃじゃない。
『 坊っちゃんかぼちゃっていう小さめのかぼちゃ丸ごと使ったチーズケーキなの。
味はおいしいと思うんだけど…』
俺に渡したかぼちゃを美優さんは自分の方へ引き寄せる。
そしてしぼり袋に入れたホイップクリームで何かを書いて、再び俺の方へと渡した。
そこに書いてあったのは”happy birth day”の文字。
『本当は明日出そうかなって思ったんだけど…
やっぱり食べて欲しかったから。』
そう言って微笑んだ美優さんはやっぱり可愛くて、今年も最高の誕生日プレゼントをもらったなって思った。
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