第10章 デート編 一松くんのドキドキデート日和
「一松クゥーン、朝からめかし込んじゃってどーこ行ーくのーぉ?」
おそ松兄さん…五人の中である意味一番メンドくさい。
無駄に勘が鋭く無駄に空気を読む。
つまり、空気を読んだ上でこの発言…殺したい…。
「どこって…猫」
猫神社だから嘘はついてない。
「ふふっ、猫って言いながら、もしかして女の子ー?ボクこの間見ちゃった、一松兄さんがクソカワイイ子と手を」
「トッティ…」
誓いを破り笑顔解禁。
薄笑いを浮かべながら視線をぶっ刺すと、蛇に睨まれたカエルのように震えだした。
「な、なぁに?」
「地獄の牛鬼って話、知ってる?なんでも、恐ろしさのあまり聞いた人を死に追いやるという怪談なんだけど…昔々、あるところに」
「ちょっとやめてぇーーっ!?爽やかな朝から何言い出したのこの人!!」
「おいっ!抱きつくな!気持ち悪い暑苦しい!!」
トッティが悲鳴をあげてチョロ松兄さんにギュッてしてる。
ヒヒッ…上手くいった。
騒いでる間にさっさと家出よう…。
立ち上がり玄関を開ける。
「一松にーさーん」
「なんだよ?」
十四松に呼ばれ、チッと舌打ちして振り返る。
「いってらっしゃーーい!!」
「…うん」
返事をすると、ニカッと笑う十四松。
「グッドラックブラザー!!」
「あぁ?脳みそストローでチューチューすんぞこのクソがっ」
「オレの扱いっ!?」
うるさいクソ。親指ピンとかいちいちイラっとすんだよ。
大体、兄弟全員玄関で見送りとかさ、みんなどんだけ暇人なの?
おれのことはほっといて。
「……じゃあ」
(みんな、いってきます…)
「おやつは300円まで、セックスは3年後まで禁止だよーん」
「……」
おそ松兄さんをガン無視して、おれは戸をピシャリと閉めた。
久々に主と会える。
楽しみかも。
いや。
楽しみだ。
・・・