• テキストサイズ

【HQ/R18】二月の恋のうた

第9章 恋の季節(2)


「若利くん、馬鹿でしょ⁉︎」

休養日の翌日。
珍しく休日解放されていた学食の一角で、昨日の出来事を粗方話し終えた俺に対して天童が放った最初の言葉はそれだった。

俺は、俺を囲むように座る2年を順々に見渡した。
昨日、戻った時にたまたま出くわして大まかに事情を話した大平以外は、皆、天童と同じような表情をしていた。

俺は一時停止を解くように話を続けた。

「誤解を与えてしまったことに関しては、俺自身、反省している。試すつもりなど…」
「そこじゃねーよ、若利」

全部言い切る前に、右斜め前から瀬見が俺を指差して言ってきた。

「誤解とかそういうんじゃねーだろ、それ」
「英太くん、もっと言って」
「なんで前カレとのことなんて根掘り葉掘り聞いてんだよ」

瀬見の追求に、俺は、以前付き合った男のことを「前カレ」というのかと、新しく得た知識に軽く驚く。
無論、尋ねられたことには真面目に答えてもいる。

「さっきも言ったが、知りたいと思ったからだ」
「知りたいか? 相手の過去のこととか。知ってどーすんだよ」
「ちょい待て、瀬見。俺は若利の気持ちもわかんなくねーよ」

そう言って小さく挙手して瀬見の話を止めたのは、俺の左隣、瀬見の対角線上にいる山形だ。

「知ってどうするかと言われればそれも困るんだけどな、どういう奴と付き合ってたか、正直気にならないか?」

「俺、気にならない派」と山形の対面で片肘をつき始めた天童は「気にならない派というか気にしない派」。

「う…そうだなぁ。俺は、何で別れたか、ってのは気になるかもしれねーな」
「問題は聞き方じゃないか?」

俺の右隣から、まだ箸を持ったままの添川が参戦する。

「いくら何でも『どこに惹かれていたか』ってのはないだろう」
「それを言うならタイミングでしょー。初デート、しかも2人きりの密室でその話はありえない」
「大体、なんでそんな展開になったんだ、若利。試合のDVD観てたんだろう? 話の流れから天海さんが前カレのことを出してきたとか?」

流れるようなボールトスを思わせる話の振り方に、俺も淀みなく答える。

「話を振ったのも俺からだ」
「若利くん、なんでー?」
「俺が天海のことを好きだからだ」

俺が上げたボールは高く弧を描いて、しかし、誰も拾わない。
聞こえなかったのか。
俺は繰り返す。

「好きだからだ」
/ 230ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp