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【庭球・BL・海不二】黄昏に映える人

第12章 黄昏に映える人。


 冷蔵庫の中には、海堂の好きなジュース。
 母さんには感謝しなくちゃね。
 グラスに注いで、自分の部屋に向かう。

 …はぁ。
 緊張、するな。
 でも…。
 顔が緩むのが抑えられないよ。
 海堂は、わからないって言ってたけど。
 きっとそう。
 昨日のことは、無かったことにしようって、忘れようって思ってたけれど。
 忘れなくても、いいんだよね。
 ドキドキが止まらない。
 僕の気持ちを、伝えたい。
 ねぇ。
 さっきの…どれだけ僕が嬉しかったか、わかるかな。

 ガチャ、とドアを開ける。
 西日の差し込む窓を背に、海堂が僕を見る。
 逆光で、その表情はよく見えない。

「お待たせ。オレンジジュースで良かったよね?」
「……」

 こちらを見たまま、反応が無い。

「海堂?」
「…あ…いえ」

 ゆるく首を振って、海堂は一歩下がる。
 すると、西日がちょうどその横顔を照らして。
 すっきりとした顎のラインが見えた。
 ドキドキする。
 僕は男なのに…海堂がすごく格好良く見えて困る。

「どうぞ、座って」

 小さなローテーブルにお盆を置いて、ベッドを背もたれにラグに腰を下ろせば、海堂も同じようにして隣に座る。

「…どうぞ?」
「あ…ありがとうございます」

 グラスを手渡して、僕もジュースに口をつける。
 家に誘ったはいいけれど…どうしたらいいかな。
 海堂も、緊張してる、よね。
 どうやって、伝えよう?
 そう考えていたら。

「あの…」

 言いにくそうに、海堂が口を開く。
 伏し目がちなその表情が、たまらない。

「俺…」
「…うん」
「なんて言ったらいいか…その…」

 あの、その、俺…と海堂は言葉を必死になって探してくれている。
 僕のために。

「ねぇ、海堂」

 名前を呼ぶと、びくりと体が揺れた。
 あ…。
 顔、すごく赤い。
 僕の胸は、期待でいっぱいになる。
 そういうことだよね。
 自覚してないだけで。

「もう一度…確かめて?」

 僕の言葉に、海堂はすぐに応えてくれた。
 ぐいっと腕を引かれて、ぎゅっと抱きしめられる。
 僕の鼓動も、海堂の鼓動も。
 同じくらい早い。
 胸の中だけじゃなくて、体中、甘い感覚に痺れそう。
 初めて会ったときは、僕よりも小さかったのにな。

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