第13章 I'll be there
翔「あっ!」
玄関でぐるぐると考えていたら、先にリビングに戻った翔さんが大声をあげた。
何事かと駆け寄ってみると、扉の側に緑色の財布が落ちていた。
「あいつ…!」
直ぐに拾い上げて、走り出した。
「届けてくるからっ!」
翔さんが、「俺も行くよ」と追いかけてきたけど、「ひとりで大丈夫」と振り返らずに応えた。
とにかく、財布を届けねばという使命感と…翔さんと2人きりはまずいという思いがわき上がってきて…一心不乱に走った。
5分も経たないうちに、バス停でキャリーバッグに跨がってバスを待っているまーを見つけた。
雅「あれ?松潤?」
「おまっ…ハア…ハア…財布…っ、落としてたぞ…っ!」
膝に手を置いて、肩で息をしながら財布を差し出した。
雅「え?あ、ほんとだ。ありがとう、助かったよ~」
ジーンズのポケットに手を突っ込んで、財布が入ってないことを確かめてから、俺から財布を受け取った。
雅「この中にカードとか家の鍵とか入れてたからさ~。本当にありがとうね、松潤」
「おまっ…、うん、まあ、その…うん。行ってこい」
「そんな大事なもの入れた財布を落としてんじゃねえよ」って、言おうとしたが…止めた。
今は、親父さんのことで頭がいっぱいだろうからな…。
バスの窓越しに手を振ってくるまーに、出来る限りの笑顔で手を振り返した。